本日しし座流星群が見られるかもしれないということで、流星群を見るウォルスコ　短いです
実際に自分が見に行くかは定かでない……寒いし

　真夜中の下、スコールは夜空を見上げる勇者を見つけて小首を傾げた。満点の星空は見事だが、一心に眺めている勇者の姿が、少々不思議だったのだ。
　多少の距離なら離れていても他者の気配にすぐに気付く勇者だが、あと数歩のところまで近づいてようやく意識を向けてくるほどの無防備さに、スコールは益々訝しんだ。
「何を見てるんだ？」
　隣に立ち、同じように空を見上げれば、勇者が一度こちらに目を向けて、再び夜空へと戻した。
「いや、先程から星が奔っていてな」
「はしる？」
　どういう意味だと聞き返そうとしたスコールの視界に、唐突に光の尾が入り込み、ああと納得する。星そのものは眺める機会は多々あるが、これほど希少なものなら、記憶のない勇者が知らなくても無理はないかもしれない。
　“奔る星”の説明をしようとスコールが口を開いたところで、光がひとつ、またひとつと尾を引いていった。思わず、あ、と小さく声が漏れて、勇者の視線が向けられた。
「あれは、流星群だ」
「りゅうせいぐん？」
「流れ星……あんな風に光が伸びるやつな、それの群れだ。あんなに落ちてくるのは稀なんだ」
　希少な光が滑り落ちる光景から目が離せないまま説明すれば、なるほど、と納得のような言葉が返ってくる。入れ替わりのように勇者を見れば、薄氷の眸で夜空を余すことなく見渡していた。
「――美しいな」
　感嘆を零す勇者の、白い横顔と水の色の髪が冴えた夜闇の中で浮かび上がるようで、一瞬スコールは流星群を忘れて見惚れた。はっと我に返り、慌てて視線を外してから、未だ悟られていないにも関わらず、取り繕うように口を開く。
「流れ星に願い事を三回唱えると、叶うらしいぞ」
「あの一瞬で、三回もか」
「さすがのあんたでも無理だろうな」
　驚きの色を見せる勇者が少しおかしくて、熱を持った頬をそれとなく隠しながら軽口を叩けば、「そうだな」と律儀な肯定が返ってくる。生真面目な勇者でも、さすがに試す気はないらしい。
　スコールとて願いを流星に乞うほどロマンチストでもなければ、“願い事”で済ますには重すぎもした。しかし、何とも知らぬ世界で、流星群を目にすることができた、それも勇者と共に。願い事などしなくとも、それで十分だと思えるのだ。だから流星に、勇者に見惚れることもできたし、穏やかな気持ちで軽口も言えた。
「だが、それでも構わない。試す前に叶ってしまったからな」
「え？」
　何か願い事があったのだろうか、と瞬くスコールの頬に、大きな手が触れる。星の光を孕んだ薄氷が、まっすぐ覗き込んでくる。
「君が来るまで。あの奔る星の群れを、君と見たいと思っていたから」









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流星群ほどでもないと流れ星を見る機会はほぼないかなと