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DFF中心の女性向け・腐注意ブログ
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かなり前に書き始めながら形にならなくて放置してたもの
ネガティブ・乙男注意 スコがびっくりするくらい女々しい…いやいつものことか でもらぶらぶ
珍しくタイトルから内容考えたお話

ちなみにSSSとSSの違いは3000字を越えてるか否かだったり
でも小ネタと会話文の違いは特にない(…








そこでは、時間は有限だった。
それも、終えるのは自分の生ではなく世界そのもの。
たとえ大部分の記憶を失っていても、揺るぐことなく確固たるものであったはずの理が覆される闘争の世界では、時間は焦燥が常に付き纏うものだった。
そんな何もかもが縛られた世界なのに、感情だけはひたすらに自由で、そのせいでこうして今苦しくて、痛くて。世界は秩序を失い崩壊に近付くというのに、感情は深淵まで根を伸ばして形作られていくのだ。
寝台に横たわり、温かな腕に抱き締められながら、大きな月の浮かぶ遥かな夜空を望んで、ふと浮かんだのはそんなことだった。気付けばたったそれだけの、小さな当然の“そんなこと”が、じくじくと胸に蔓延り始めていた。

「…遅かったんだ」

せめて、もう少し早ければ。
眩しいからと目を逸らしてばかりで、今では渇望して止まない光からも、逃げて。それは、自分の気持ちに目を逸らすことと同じだった。
―――それでも、自然な生よりもずっと命の短い世界で、人を愛しました。
もっと早く気付いていれば、もっと早く愛し始められたなら、時間はもっと余ってくれていたのに。想うだけの、言葉を交わすだけの、触れ合うだけの時間が。
溢れんばかりの感情を示すだけの時間は、果たして残っているのだろうか、それすら定かではなく。

「遅すぎた、んだ。俺、もっとあんたに言いたいこと、沢山あるのに…」

口から零せば途端に恐ろしくなって、縋るように言い募れば、大きな手がそっと頬を包んでくれる。あと何回触れられるだけの猶予があるのだろう、その温もりを得られるのはあと幾時なのだろう。
そう思ってしまえば心細く、ただ切なくて。
出来ることなら永劫を願ってしまいたいが、それはたとえ元の世界だったとしても叶うはずのない望みで、この世界では到底叶えられるはずもなかった。だから、せめてもの猶予が欲しいと思うのに。
もっと早くその手を掴んでしまえば、その腕に飛び込んでしまえばよかった。そうすれば、もう少し満ち足りていたかもしれない。
無条件に光を受け止める月は、ただただ黙って地に光の根を落とす。根を失えば樹は立たない、星月が無ければ大地に光は下りない、世界が無ければ自分たちは存在出来ない。混沌が消えても秩序が消えても、時間が足りない。

「…後悔しているのか」

落ちてきた言葉に顔を上げれば、細めた薄氷の双眸とぶつかった。
後悔、そう言われてみれば、それが一番近いのかもしれない。小さく頷けば、頬にあった手が前髪をかき上げた。
細長い影が取り払われ、闇に浮かぶ白い顔がよく見えるようになる。その肌が予想よりもずっと白いことを知ったのも、ごく最近で。
もっと早く、知りたかったよ。止まれとは願わないから、せめて。
後悔に埋もれて息苦しくて、眉を顰めれば指先が眦に触れてくる。夜更けに体温を奪われたのか、指先はいつもより冷えているように感じた。

「私は…私も、まったく後悔していないと言えば、嘘になるが…」

言葉を一度切って、同意をしてくれるのを優しいと思う。譲歩はなく、一方的とも頑固とも思っていたのに、こうして触れ合うようになってからそんな柔らかさも知ったのだ。
それでも本意はあくまで否定しようとしていることは分かるから、安心だけは出来ないままに言葉の続きを待つ。

「遅すぎたとは思っていない。たとえ今も共に眠れるだけの間柄ではなかったとしても、遅いことはない」

どういうことだ、と見上げる視線に疑問だけを込めたつもりで、その実得ていた不安を混ぜてしまったらしい。こちらの戸惑いは予想していたようでありながら、一方で見誤ったのは不安の深さか、彼は少しだけ言葉に迷うそぶりを見せた。
彼を困らせていることは分かっている、それでも、今共にいることは望まれていなかったのか、自分だけだったのかと思えてしまって。今までを思い返せばそんなことはあり得ないと分かるはずなのに、暗闇に潰れそうな思考の内では彼の光も上手く掴めない。
いかないで、おいていかないで、はなれないで、はなさないで。
思わずそう言い募ろうとして、口を数回開閉させるも声にならないまま、いつの間にか握り締めていた彼の服を、掴む力を強めてしまうばかりだった。
自分か彼かのどちらかの声が発されるのを待つ間に、顔が近付いてこつりと額が触れる。

「―――君は、『今』を後悔しているか?」

俯けていた視線を凛然とした双眸へ戻して、瞬いてからゆっくりと首を振った。

「それがあんたと一緒にいる『今』なら…そんなこと、ない」

あるはずがないと重ねて否定すれば、私もだ、と同意が返ってきて、途端に溢れた安堵に少し眉根が解ける。彼の言葉ひとつで、ここまで安心も不安も深く得られてしまうのかと、自覚して自嘲するには余裕が足りなかった。彼の言葉への疑問とそれとの繋がりに対する不安が、まだ残っていたから。

「スコール、『今』があるのはこれまでの過程があってこそだと、私は思う」
「結果論、か…?」
「あまり論理は分からないが」

この世界に召喚され、クリスタルを求め別れ、会しては戦い、再び別れて、再会して。
『今』を迎えるためには、どれかが足りなくても駄目で、何かが多くても駄目だった。それは分かっているけれど、もし、が許されるならば、と考えてしまう。
もっと、ずっと、一緒にいられたのかもしれないと後悔してしまう。
そんな、誰にもどうすることも出来ないことをぐだぐだと考えていては、彼を無駄に心配させてしまうだけで、更には疎ましく思われるだろうに。諦めてしまえばよかったのかもしれない、暗い考えは払拭できないままだとしても。

「それに、私が君を想い、それが密かなものであった内も。その時間は、私にとって確かに糧だったのだ」

結局痺れを切らしてしまったが、と小さく苦笑されて。
そういえば告白は彼からであったことを思い出して、その場景まで思い出してしまって頬が熱くなった。同じように彼を想い、そして想いを受け取って返した時には、こんな不安は思いもしなかったのに。
薄らとした頬の朱は夜闇に隠れるはずだったのに、触れ合ったままの額から僅かに上がった熱が伝わってしまったのか、彼が苦味を消して微笑んだ。

「…君が私を想ってくれていた時間は、君にとって無駄だっただろうか」

自分が、彼を想っていた時?
クリスタルは手に入れられたのか、今はどの世界にいるのか、相変わらずひとりなのか、敵に傷付けられてはいないか、また、会えるのか。そう考えていた時?
その時は、景色に薄黄と群青を探しながら、水の色と薄氷を思い出して、光を感じたい一心だった。逸らしながらも積み上げたそれは崩れるどころか揺れもせず、気付けば彼のことだけで心の容量を一杯にしていた。
自分が彼を想っていた、その言葉を自意識過剰だと笑うには、それこそ今のことのように思い出せるほど覚えがありすぎる。羞恥の助けがなければ意地も張れない以上、懐かしくも未だ同じ想いで胸をすっかり埋めている今は、素直に首を振って否定出来る。その拍子に離れた額の代わりに肩が寄せられて、緩く抱き締められた。

「離れていただけ…募るのか」
「そうでもないと、君は大人しく触れさせてくれなさそうだ」

おどけたような言葉には、少し否定出来ないと思った。
それでも。

「だから遅すぎることはない、スコール」

腕の力が強くなって、息が細くなる。ただの結果論なんかじゃない、そう気付けば、最後のわだかまりが解けるのを感じた。
後悔は消えそうにないけれど、離れていた時間があったからこそ、今こうして彼の想いに深く抱かれるというのなら、その時間すら愛しく思えるかもしれない。
ならば後悔しただけ、残る時間を大切にしよう。抱き締めるように温めて、祈るように握り締めて。
そうして、振るう剣が震えないように、ひたすらに前を見据えよう。光に消える、その時まで。
服を握りしめていた手を背中に回し、目を閉じれば彼の鼓動の音が耳を打つ。静かにやってきた睡魔に身を委ね眠るのに、恐怖はもうなかった。

月が大空の玉座を支配する黒い渓谷には夜しかなく、朝は来ない。ともすれば疑似的に永遠を感じられるかもしれないこの世界を離れ、次の世界へ進むことが出来るのは、彼がしるべとなって歩き続けてくれるから。酷い依存だと分かっている、けれど何もかもが不安定な世界で、彼の存在は何よりも頼もしくて愛しかった。
それだけ自覚していながら、冷えていた彼の指先を温めたのが自分の熱だということには、気付かないままなのだった。









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書き始めからずいぶん時間がかかってしまった…


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