梅雨ネタみっつめ　今度は現パロで
・現パロなので呼び名はライト
・ナチュラルに同棲
どっちかというと湿度のお話な気がする　更に言うとウォルスコよりスコウォルな気がする　いやどっちでもいいけどね！

▽　ついったに鍵かけたのでリアタイ復活させました

『梅雨前線の到来により、しばらく湿度の高い日が続くでしょう』

言うのが一週間遅い、と内心テレビの気象予報士に文句付けながら、ごろりとソファの上で寝返りを打った。十分も寝転がっていないというのに、ソファの生地は生温く、肌にまとわりついてくる。そうなるとテレビの音すら煩わしくて、手を伸ばして取ったリモコンのスイッチを容赦なく押した。
ぶちんと画面が暗くなるのを見送ることもなく、代わりに瞼を閉じて視界ごとシャットアウトする。昼もだいぶ過ぎていたためか、暑いというほどではなかった。高いのは気温ではなく湿度で、垂れるべき汗が薄い膜になって、肌を覆っているような感覚。
冷房は同居人（彼は同棲だと言うが、まだ、恥ずかしい）も自分もあまり好まないから、現状は窓を開けるのみで対処しているが、限界がくるのはそう遠い日ではないだろう。
がちゃりとドアが開いて、ビニールが置かれる音がした。

「――どうしたんだ」

そういえば休日出勤だったな、だから早いのか、何買ってきたんだろう、と考え考え目を開けた丁度その時に、常通りの涼しげな声が耳に入ってきた。こちらは参っているというのに、まったくもって平気そうな表情がソファの背越しに覗き込んでくる。

「…別に」
「暑いか？」
「べつに」

当たり前のことを聞くな、いやさっきまでは暑くはなくてただじめつくのが嫌だっただけで、あれ、どっちだっけ。
ぼんやりと思考を鈍く回しながら、彼の手が伸びてくるのを見る。額に軽く貼りつく前髪を除けられて、汗をかいていたのだとようやく気付いた。
さほど高くないはずの彼の体温も熱く感じて、途端に髪を撫でてくれる指先まで煩わしくなって、そう思ってしまった自分が一番煩わしくて、目を閉じて顔を背けた。

「スコール？」
「暑い、から」

触るなよ、と言いかけて。ぎゅむ、と露わにした頬をつねられたものだから、うっかり飲み込んだ。大した痛みはないが、驚くには十分のそれ。

「そうか。せっかくシーソルトアイスとやらを買ってきたというのに、君はいらないんだな」

間髪なく入れられた言葉に、体が跳ねて瞼を開けた。横目で見る彼は、ソファの背に頬杖をついて面白そうにこちらを見下ろしている。シーソルトアイスの単語に反応したのが、そんなにおかしいか。子供扱いされたような気がして、軽く睨みつけるも、それこそアイスのような色の眸はあっさり受け流してしまう。
特別アイスが好きなわけではないが、シーソルトアイスは別だった。薄青くて少し塩っぽいそれを学校の後輩に貰って食べてからというもの、その味をライトに軽く熱弁してしまったほどには気に入っていたのだ。
となれば、子供扱いされてでも逃せまい。…それに。

「……食べる」
「素直でよろしい」

それだけで頷いてくれるライトは、彼らしいとも思う。ただ今は、自分の方がそれだけでは済まなくて。

「……悪かった」
「何が？」
「別に」

不思議そうに首を傾げつつも、ビニール袋からアイスを取り出す背を眺める。お気に入りのアイスを手に、それよりもずっと気に入っている双眸を向けてくれる彼に、自嘲のような照れ隠しのような苦笑が浮かんだ。
―――本当は、反応したのはシーソルトアイスにだけではなくて。邪険にしてしまった自分の身勝手さに罪悪感があったのと、そのせいで彼の声がほんの少し湿気に似た寂寥を帯びたのに、気付いてしまったから。
とはいえ、それを認めるにはもう少し素直さが足りなかった。

だって、いつも涼しげなあんたがじめっとしていたら、余計にじめじめするだろ。
思っている以上に彼を好いてしまっている自分を認めないためには、言い訳として湿気に責任転嫁する他なかったのだった。









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シーソルトアイスをくれた後輩は空でも六でも