DFF中心の女性向け・腐注意ブログ
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ルフェイン騎士団は有翼人界の上層部と直接繋がった機関である。騎士団の付属として、研究所も存在しており、有翼人の中でも屈指の研究員が所属するのがそこだった。同じ浮遊大陸上にありながら、その研究所が上層部や騎士団からも離れた場所にあるのは、立地の問題ではない。問題は、その性質――主に研究員の――にあった。
青空色の羽を持つ諜報部員ヴァンは、厄介な場所に呼び出されたものだと憂鬱になりながら、目の前にそびえ立つ研究所を見上げた。傍目から見ればまともなのだ。あくまで、外観は。
まったく嬉しくもないが、すっかり覚えてしまった廊下を歩いていく。目的地に近付くにつれてどこか鉄くさい臭いが強まり、白かった内装は、ところどころが錆びついたようなものへ変わっていた。
「これもあいつの趣味なのかね…。あ、なぁ、あいつちゃんといる?」
すれ違った研究員に尋ねれば、無言の頷きが返ってきた。手間にならなかった安堵と、やはり会わなければならないという落胆に肩を落としつつ、ヴァンは辿り着いた一室の中へ入った。
「んもう、おっそ~い! ぶっ壊しますよ!?」
「わる…すんません」
妙な色の液体が入ったフラスコ、得体のしれない物体が入ったビーカー、異臭がする煙、廃材にしか見えない機械らしきもの、その他もろもろ。奇妙甚だしい研究室だが、最も奇妙なのはその主だろうとはヴァンの思うところ。
カラフルな羽根を三対携えた研究所の主は、くるくると無駄に回りながら甲高い声でヴァンを糾弾してくる。それらを右から左へと聞き流しつつ、おおよそキリが良いところを見計らってから、ヴァンはやっと用件を切り出すことができた。
「なぁ、なんで俺呼ばれたの…んですか?」
「んん? あーそうそう、ちょっとお使い行ってきてよ、お使い」
軽い調子で言われたそれに、がくりと項垂れる。諜報が仕事のはずだというのに、一体自分の何が気に入られてしまったのか、あるいは嫌われてしまったのか、このかなり特殊な研究者様には何度も材料集めを主とした雑用を命じられてきたのだ。
「…まーた雑用ですか」
「はじめてのおつかいじゃないんだからダイジョーブでしょ! あそこだよ、フィン! ニンゲンの田舎町! ちょちょいのぱ~っでしょ! ほらいけさあ行け!」
「ちょ、ま、待てって!」
場所分かんなきゃ適当に行ってきて、などとのたまわれるだけならいいが、それだけで部屋を追い出されては流石に困る。目的地がいきなり人間の町な上、おつかいの詳細がまったく分からないのだ。
いくらなんでも無茶にもほどがある、とヴァンは一応の敬語もすっかり忘れて憤慨した。
「だから! お使いってなんだよ! 何してこいっての!?」
「ああん? 察せよコノヤロウ…仕方ないですねぇ。ぼくちんのおもちゃを返してきてもらって欲しいの、分かる?」
分かってたまるか!!
言葉のドッジボールも大概にしてくれ、と思いつつも、ここでこちらが完全にキレてしまっては何も進まない。憤慨をどうにかこうにか飲み込み、ヴァンはなんとか深呼吸すると、少し冷静になって問い返した。
「そのおもちゃって何なんだよ」
「え~? だからあ、羽生えたかわいーい女の子ですよう! もう、何言わせんの!」
「女の子…?」
これでいいでしょ! と今度こそ部屋を追い出されながら、ヴァンは苛立ちとは別に眉を潜めた。
有翼人の女の子が人間の町にいるというのか。それはただ酔狂で居るだけなのか、しかしあのマッドサイエンティストに“おもちゃ”と称される者かと思えば、如何様にでも考えてしまえそうだ。
まぁ、会ってみれば分かるよな。そうヴァンは結論付けてから、まずは目的地の位置を確認するため、他の“まともな”研究員を探すことにした。
翌日、朝一で届いた依頼のために、スコールは再びトーシュの森へと向かっていた。
オチューが異常繁殖し、討伐されたことは人間にもとうに知れ渡っており、討伐されたオチューの触手の収集が今回の依頼だった。オチューの触手はしなやかでかつ頑丈なため、主に良質な鞭の材料となるらしい。
そのような材料が多く手に入るかもしれないとなれば、目的を同じくする者が集まりそうなものだが、有翼人による討伐が終わったばかりということもあって、実際にはあまりいなかった。だからこそ、この依頼の報酬は普段よりも良い値であり、スコールは苛立つ頭を抱えつつも、誰よりも早くと早朝に出発したのだ。
そう、スコールは現在、相当に苛立っていた。原因は、初めて夢に見た黒い羽。朝目覚めてからというもの、初めて現れたその色が、どうしても脳裏から離れなかったのだ。
(なんだよ、あの羽は。今度は黒だと?)
白に近い薄い色の羽ならありすぎるほどに見覚えがあるが、黒に見えるほど深すぎる色の羽は未だ見たことがない。
森に辿り着き、木々の陰を見て、夢の色と照らし合わせる。依頼である触手を探しながら、色彩を確認していくが、しばらく森を歩いても目的の色は見付からなかった。
もっと別の色なのか、あるいは純粋な、ほんとうの黒だったのか。そんな羽を持つ者が存在するならば、有翼人の長くらいかそれに匹敵する力を秘めた者だろうかと想像できるが、忘れた過去の内にも会うはずがないと確信するような者が、夢に現れるなど到底考えられない。
ぐるぐると考え考えつつ、スコールはざくざくと森をひた進む。異常発生の名残か、メズマライズどころか他の魔物も戻ってきた様子はない。その一方で、鳥の鳴き声などは少なからずしているものだから、普通の鳥の方が魔物よりもずっと逞しく思えてくる。
しばらくして、ようやく断ち斬られた一本の触手を草の陰から拾い上げたところで、不意に気配を感じた。殺気はなく、ただ見られている、それだけの視線。しかも、どうして気付かなかったのかと不覚に思えるほど近くから。
ぱっと振り返って、スコールは思わず動きを止めた。
「――なんで、あんたがここにいるんだ?」
「…それはこちらの台詞だ」
薄氷の双眸と同じ色の羽、凛とした声。群青の鎧ではなく、見慣れない白い騎士服を纏ったライトが、これまた珍しく虚を突かれたような顔でそこに立っていた。
しばらく無言で見合って、やがてスコールが笑むように口元を緩めた。
なんとなく知った気配だとは思ったが、本当に彼がいるとは思えなかったために驚いてしまった。しかし、それに悔しさを覚えるよりも、珍しい表情を見せるライトをおかしく思ってしまったのだ。
知り合ったのはいつだったとか、どうしてライトが自分を気に掛けるのだとか、気になるのに聞き出せない理由だとか、それらの疑問のせいで覚えてしまう苛立ちだとか。確かに抱えていたはずなのに、こうして意図せずライトに会ってしまっては、それら諸々は呆気なくスコールの頭から吹っ飛んでいた。
ライトといえば、カインに続いてスコールにまで間抜け顔を晒してしまったが、それを自覚して気恥かしく思ったのか、あるいは別の要因によるものか。スコールから外した視線が不自然でないように、ライトは一度ぐるりと辺りを見回した。
「仕事なのか」
「そうだな」
“仕事”と口にしながらも、目的が魔物討伐でないと予測できるだけで、その表情を和らげているライトに頷いてから、スコールは不意に湧いたからかいに似た気持ちに任せて、戻ってきた薄氷の目を覗き込んだ。
「触手が良い武器の材料になるらしい。……邪魔するか?」
「いや」
挑むような目つきで武器に手を掛けてみせたスコールに、ライトはいつもの生真面目な風ではっきりと首を振った。人間の戦力の強化が有翼人には不都合とはいえ、ライトがそのようなことを考えるはずがないとは、軽口を言ったスコールにも分かっている。
「戦うつもりでここに来たわけではないよ。何よりこの森には、モンスターなど残っていない」
「やっぱり、そうだったのか」
思った通りだと頷いてから、ん? と首を傾げる。それでは、ライトは何の用でこの森に来たのだろうか。
そうスコールが問えば、今度は苦笑を浮かべてみせた。
「休息を取れ、と追い出されてな。掃討はしたが、一応異常がないか確認をしに来たのだ」
「……いや、それおかしくないか。少なくとも、あんたを追い出したやつが言った“休息”とは違うだろ」
「そうだろうか」
どんな仕事熱心だと呆れるも、ライトの場合、そもそも仕事を仕事と認識していない可能性もある。そう思えば、なんだかんだと世話を焼いてくれるらしい同僚か部下かに、追い出され紛いに休憩に出されてしまうのも納得できる。――肝心のライトは分かっていないようだが。
(やっぱり、天然なのか? 真面目過ぎるのも考えものだな)
額を抑えつつ、内心呆れ混じりにスコールがライトに思うことは、彼の同僚や部下たちも度々思うことであるとはつゆ知らず。
本人ばかりが不思議そうに首を傾げていたと思うと、唐突にそういえば、と呟いた。
「君に会えるならば持ってこればよかったな」
「は?」
「君に渡すもの…ああ、プレゼントがあったのだが」
え、とも言えず、スコールはぱちぱちと瞬きを繰り返した。プレゼントって、どのプレゼント? あのプレゼント? ライトが、俺に? …何で?
本来なら喜ぶべきものも、相手次第で不気味なものになるのだと、戸惑いのさなかでスコールは痛感した。
…渡すもの、だけならばまだスコールの不信感も軽減されたものの、ライトは『プレゼントと言え』と、事前にジタンに言い含められており、それに違和感も疑問も抱かぬまま従っていたのだった。
「な、何だよ、それ…」
「G.Fだ」
「……あん?」
有翼人のライトが、人間のスコールにG.Fをプレゼントとは。不気味さも不信感も通り越して、もはや意味不明である。
盛大に眉を顰めているのを、ただの疑問ととったのか。スコールの表情を訝しむこともなく、ライトはプレゼントを渡そうとするに至った経緯を説明した。
「――ということだ。力を失ったG.Fでは、君の役には立たないかもしれないが」
「あ…ああ……別に…」
居るからジャンクションしなくてはならないというわけでもあるまいし、副作用も元から気にしていないし。それよりも、ライトと自分の妙な関係が、同僚にまで知られていることの方が不安なんだが、とスコールは思う。口ぶりからしてバッツやジタンと同じように、ライトの信頼を置かれている相手だと知れたから、余計な危惧を覚えるほどではないものの。
(じゃあ…言われなかったら、プレゼントなんて考えなかったんだろうな。…こいつだしな)
やっと奇妙な行動の理由が分かり、スコールは溜め息を吐きつつも、少々失礼な納得と安堵に眉根を緩めた。一方で、胸に残ったのはどこかもやもやとした感覚で。
これは、なんだ?
不可解さが抜け落ちてしまえば、残るものなどないはずなのに。内心では首までひねりながら、もやもやについて考え込んでいるスコールに、不安を覚えたのはライトの方だったらしい。
「スコール? …やはり、迷惑だっただろうか」
「……え?」
「私は心の機敏に疎いと、鈍感だとよく言われてしまうからな。知らず君を不愉快にさせているかもしれない。そうであれば…」
「な、待っ…そんなこと言ってないだろ!」
思わず飛び出した、叫ぶかのような声量に、ライトのみならずスコール本人までが驚いていた。そのまま奇妙な沈黙が流れ、何か言おうにも言葉が浮かばず、ライトもまっすぐ見つめてくるばかり。居心地の悪さだけははっきりしていて、スコールが身じろいだそのとき。
ぐう
低く、どこかか細げな音。発生源は、といえば。
「………は、腹が減ったな」
「そのようだな」
今朝はいつもの夢のせいで早起きの予定が少し寝坊してしまったり、フリオニールも忙しそうにしていたものだから昼食の弁当だけで手いっぱいだったり。だから、朝食など摂れているはずもなかったのだ。
とはいえ、スコールのそんな経緯など、ライトが知る由もなく。ぼそ、と気恥かしそうに呟いたスコールに、ライトは先程覚えた不安や戸惑いよりも、微笑ましさが大きく勝る心地に任せて、小さく笑い掛けてやった。
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ケフカとヴァンくん登場
DFF/DdFFキャラを全員出すのは多分無理です…
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