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DFF中心の女性向け・腐注意ブログ
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レオンさんに滾ってウォルレオが勃発した結果のお話 微妙にDFFと繋がってたりします
ちょっとカテゴリに迷いましたがスコール=レオンだしな、ということでウォルスコSSSに






昼の陽は高く、鉄の地面が白く照らされる。巨大なコンピュータが鎮座する部屋を出て、薄暗く長い廊下を通ってきたばかりの身には、それは少々眩しすぎた。目を細めて手で影を作り、かんかんと音を立てながら歩く。途中で以前見かけた妖精たちとすれ違ったが、何も話すことなく別れていた。視線は向けられて、もしくは話しかけられた気もするが、敢えて無視したわけではない。ただ、“話せなかった”のだ。
なにかに呼ばれたように、急かされているように、足を進めていた。
それからは、再建委員会の仲間や闇のものにも会うことなく、かの大決戦で偶然に見付けた、小さな洞窟まで辿り着いていた。見慣れない美しい結晶は光を孕んで、洞窟のいたるところから生えている。普段なら有り余るだろうそれらの需要を考え、供給に逡巡しているというのに、意に介さず通り抜ければ、広大な谷が目の前に広がった。街が本当の名前を取り戻すまでは、どこかくすんだ夕陽ばかりだった空が、今は蒼く白く果てなく続く姿を見せるようになっていた。
<輝ける庭>という、その名にふさわしい青空。そして、世界に愛された勇者である少年とその友達(なかま)が闇を蹴散らしたという、広大な自然の空間。その入り口に“彼”はぽつねんと、しかし凛として立っていた。…振り返った。

「――君は、スコールか」
「レオンだ。そういう、あんたは…」

今は捨てた本名に反射的に反論してから、彼の名を口にしようとして、出来なかった。姿が、声が懐かしくて、記憶よりも少し老けていて、向けてくる眸が変わらず優しかったから。喉が震えて、唇が固まって、目を見開いて、動けない。
これは夢かと疑えば、固まってしまったのをおかしく思ったのか、彼が瞬いてから静かに微笑んで、顔が熱くなった。覚えている、忘れもしない。これらすべては、一度失ったものだった。名前を捨てるきっかけの、ひとつだった。
首を振り深呼吸をして、金縛りを解いてからなんとか口を開いた。

「…なんで、いままで…」

住んでいた世界が闇に襲われてから、諦めこそしなかったが、彼の生存の確立が著しく低いことは認めていた。それがどうしてここにいるのか、どうやって生きてきたのか、街の再建に尽くすばかりの頭ではまるで想像がつかない。
微笑みを引っ込めて、考えるように間を開けてから、彼は穏やかに言った。

「永い、夢を見ていたよ。そこには君もいて、ああ、私も君も少し若かったな」
「夢? …俺、も?」

頷いて、慈しむように懐かしむようにまた彼が微笑む。こんな風に笑うやつだったろうか、とぼんやり考えるも、あまり思い出せない。忙殺される日々の中でも忘れないようにと、大切に抱えてきたはずの記憶ですら、曖昧になるほどの時が流れてしまっていたらしい。自然すぎて、小さな勇者の時のような、どこか人為的に思える失い方ではないのが歯痒い。
彼の纏う薄黄の外套が、谷を吹き抜ける風に翻る。どこかにはありそうで見た事のないマントは、一目で使い込まれていると分かった。

「それは、別の世界にいたんじゃないのか」
「別の世界か。いつの間に信じるようになった?」
「さあ……いつ、なんだろうな」

――世界はきっと、ここだけではない。君の好きなライオンが沢山いる世界も、あるかもしれないな。
彼は昔にそう語っていたが、街が闇に喰われ、シドのグミシップに詰め込まれるまでは、どうしても信じられなかった。それなのに、まるで何もかもを知っているかのような王に会い、空想としか思っていなかった理を教えられ、ライオンのいる世界があると知らせてくれた勇者の少年と知り合っているのだから。信じる信じないの次元など、とうに超えている。
別な世界には、過去の自分がいることもあるだろう。そう投げやりに納得してしまえば、彼の言葉にも苦笑で返すほかなかった。偶然のような形で、秘められていた深淵の一端を知ってしまった。その経緯を語ったら、彼は信じるだろうか。

「それで、その世界は…夢はどうだったんだ」
「そうだな…。記憶が消されていた私たちは互いを知らなくて、剣を交わしもした。君からだ、剣を向けてきたのは」
「特訓でなければ、喧嘩でもしたのか」

ふたりとも剣を学んでいたから、一緒にいた時は稽古をつけてもらったこともあったのを思い出す。彼と自分では、自分の方がずっと短気だった。だから、剣を向けたと言われてしまうと、当然身に覚えもないのに有り得てしまいそうで、なんとなく気まずくなってしまう。

「夢で共に戦った仲間たちには、そう言われたな」
「戦っていたのか」
「むしろ、戦いばかりだった。それは夢(あ)の君も…ここにいる君も、同じのようだな」

闇と戦い続けて体ばかりは成長した自分を眺めて、彼は目を細めた。
どこか楽しげに語られる彼曰くの夢の内容を、疑問すら抱かず受け止めている自分は、傍から見れば滑稽なのだろう。それでも、この場には第三者などいないし、そしてなにより、彼は嘘を吐かないひとであることを知っていた。彼がほんとうに“彼”であることを、頭で疑う前に心が肯定していた。

「幼かったが、それでも強い子だった。愛しい子だった。…その時は分からなかったが、あれは確かに君だった」
「…でも、夢の話なんだろ?」

彼がそう言うのなら、それは確かに自分だったのだろうと思える。しかし、先に言われてしまったまるで衣着せぬ言葉に照れを覚えて、つい現実ではないのだろうと誤魔化したくなってしまう。そして返ってきたのは、あっさりとした肯定だった。

「ああ、夢の話だ。だから、ここでは、最期まで君の傍にいたい」

え、と声が口から零れた。
一瞬何を言われたのか分からず、開けた口を閉じることも出来ずに見つめる先で、彼は笑みも消して真直ぐな視線を向けてきていた。

「夢が終わって、仲間とも君とも離れ離れになってしまった。再び会う約束も交わせず、彷徨っていたら…こうして、再び現実(いま)の君にめぐり会えたのだ。…どうか、今度こそは約束をさせてくれないか」

“ここでは”と言った理由は不明瞭だが、おおよそだけ知れた。彼が約束すら出来なかったとは、一体どれほど過酷な夢だったのだろう。いつも涼しい顔をしている彼に、必死とすら思えるほど、真剣な眼差しで求めさせるほどの戦いの夢、世界。“めぐり会えた”と言わせる放浪はどれほど長くて、どれほど遠かったのだろう。その間、彼はずっと自分を想ってくれていたのか。

「……『心が繋がってたら、またいつか、めぐり会える』…エアリスが言っていた」

薄い氷の色をした双眸を見つめて、不思議な色をした眸の彼女の言葉を思い出す。世界が閉じられた時、再び開かれるまで自分たちは少年のことを忘れさせられてしまったけれど、彼のことは忘れなかった。長い年月に褪せた、それだけだった。
果たして彼がどこにいたのか不明であることを差し置いても、それは、彼と自分が繋がっていることの証明に、他ならないのではないか。引き合いに出してしまった勇者には、少々申し訳ないが。

「約束なんて無くても、その俺とはまた会えるんじゃないか。だから、あんたは、今ここにいるんだろ。めぐり会えたんだろ…?」
「スコール?」
「あんたの心が忘れなければ、その俺が忘れなければ」

そっと歩み寄り、外套と水の色の髪に顔を押し付ける。やっと触れた彼の体は、夢では到底得られない確かな感触を返してきた。
離れ離れになった時も、約束なんてしていなかった。それでも自分は、彼がどこかで生きていると信じていた。彼も、別の世界へ逃げた自分が生き延びていることを信じていたはずだ。でなければ、夢が終わってから彷徨うはずがない。

「アテができたら、会いに行けばいいさ。…でも、勝手にいなくなるのだけは止めてくれ」
「…それは、返答と取ってもいいのか」
「見ての通り、街は再建中だ。人手が足りない分こき使ってやるから、覚悟しろよ」

恐ろしいな、と軽口と苦笑が落ちてきて、伸びていた髪が掬い上げられる。大人にもなって背中を撫でられるのが、今ばかりは恥ずかしい以上に心地良い。

「誓おう。夢の君と、現実の君に」

約束は無くてもいいとは言ったが、要らないとは言っていないのに、律儀に言葉を替えているのが彼らしい。肩が震えそうになるのは、それがおかしいからだと己に言い聞かせる。頷きしか返せなかったのは、笑い声を上げてしまいそうだからだと誤魔化した。
どこか虚だった心が、輝きで満たされる。昔よりずっと体格も良くなったはずなのに、昔のように腕で覆ってきつく抱き締めてくれるのが、今はただ苦しいほどに嬉しかった。

「――やっと帰ってこれたのだ。私の名を呼んでくれないか、君の声で」
「…帰って早々、望むのがそれか」

しばらくしてから寄せられた願いに、面を上げて、ばかだな、と呟いて。
視界が滲み過ぎないように気を付けながら、街よりもずっと取り戻したかった、今ようやく取り戻した彼の名前を、未だ少しだけ震える声で呼んだ。










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