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DFF中心の女性向け・腐注意ブログ
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ウォルスコだけどスコール総愛されっぽさもあります
バッツが出張ってるけどバツスコ要素はなく総受けでもありません




「体が重いとか、頭痛がするとか、関節が痛いとか、他になんか変なところとかあるか?」
 覗き込んでくるようなバッツの問いに、スコールは一度口を開いてから、思い出したように閉じると代わりにふるりと首を振った。そっか、と頷くバッツは少しだけ安心したような、それでも未だ心配が拭えていないような、複雑な表情で軽く笑った。


 ――バッツとジタンと共にするテントの中では普段は一番に目覚めるスコールが、今朝は珍しく一番遅かった。とはいえ寝坊というほどでもなく、ちょうど二人が起きた頃に目覚めたのだが、それを珍しいと二人が軽くからかった。それに反論しようとスコールが開いた口からは、低く通りの良い声ではなくひどく掠れたものしか出てこなかった。
 はじめこそスコール本人を含めた三人は戸惑ったが、声が出ない以外にはスコールに不調が見受けられないという事実のおかげで、冷静さを取り戻すのは早かった。薬師のジョブをマスターしているバッツの診察があれば、声を失っていてもスコールが余計な不安を抱く必要はなかった。
「たぶん、喉にくる風邪だな。無理に声出すと悪化するから、喋らないように。あと、今は痛みがなくても後から酷くなるかもしれないから、スコールは待機して、喉あっためて安静にしてた方がいいと思う」
「じゃあオレはみんなに伝えてくるぜ。丁度朝飯で集まってるしな」
 スコールがなんとも不服そうな表情を浮かべているのに苦笑しつつ、ジタンは軽い身のこなしでテントを出ていく。バッツは傍らの道具入れを探り、清潔そうな布でできた、手のひらに収まるほどの小さな袋を取り出した。
「じゃあこれ風邪の薬……っても先に何か腹に入れないとな。飯は食えそう?」
 そうバッツが再び覗き込むようにしながら問うと、難しい顔のまま、スコールは軽く首を傾げてしまう。その様子から、今でこそ喉の痛みはないが、固形物を通すことで痛むかどうかまでは判断できないのだろう、とバッツは予想付けた。
「まあ、無理そうだったらその時は粥でも作るよ。とりあえず朝飯には出ようぜ。ジタンが伝えてくれるけど、喉以外は平気そうな様子は見せといた方がいいしさ」
 さらりと世話を焼く意味の言葉をかけられてから続いた言葉に、スコールは薄らと目元を赤らめてからこくりと頷いた。
 声が出せない以上、ジェスチャーで相手に意思を伝える必要があり、それも声を伴う時以上に大げさに動かなければならない。だからこそのスコールの挙動は、普段が大人びた彼がするには、妙な幼さを相手に印象付ける。この時は三つも上の年上らしく振舞っているバッツも例外ではなく、可愛らしいと思う気持ちに任せれば、苦味の混じった笑みは目を細めた穏やかなものとなっていた。
 スコールが朝食の場に現れると、既に集まっていた面々の眼差しが向けられた。八人分の視線が一挙に押し寄せるのはさすがに居心地の悪さを覚えないでもないが、それに心配の色が浮かんでいることに気付いてしまうと、スコールに残ったのは申し訳なさだけだった。
「咳はないから、同席してもそうはうつらないと思う。だけどスコールの分は取り分けた方がいいかな」
「本当に、喉以外に問題はないのか?」
 勇者の凛とした声が、戦闘時や手合せの時のような厳しさは伴わずにスコールへ向けられる。バッツの下した診察結果やジタンの言葉を疑っているというよりは、スコールが本当に無理をしていないのかが気になるらしい。嘘ではないと証明するように、まっすぐ向けられる勇者の視線を受け止めて、スコールがはっきりと頷くと、ようやく仲間たちは肩から力を抜いたようだった。
「刺激物になるようなものは作ってないから大丈夫だと思うけど、食べられなさそうなら言ってくれ。お粥でも作るからさ」
「あ、それおれが先に言ったんだぞ!」
「じゃあオレも参加するッス!」
「なに競ってんだか……」
 本日の朝食当番だったフリオニールの言葉にバッツが身を乗り出し、はいはいと片手まで挙げてノったティーダにジタンが呆れたように肩を竦める。セシルから料理をよそってもらった器を受け取り、ティナから水の入ったコップをもらい、なにやら至れり尽くせりとなっている現状に、スコールは感謝よりも羞恥が勝ってしまう思いで俯いた。
 
 
 喉が痛むこともなく無事朝食を終え、テントに戻りバッツの薬も服用したところで、あ、とスコールは声を上げた。実際に口から洩れたのは吐息だけだったが、痛みもなく通ったそれに関心が向くはずもなく、気付いた別の事柄に困ったように眉根を寄せた。
 今日は探索組の予定だった。喉以外に不調はないため、スコール自身は戦闘に参加する気満々だったのだが、黙ってそうするには心配性の者が仲間に多すぎる。風邪の診察結果を下したバッツにも『待機した方がいい』と言われていたのを思い出してしまえば、探索からは外されてしまうだろうことは容易に想像できた。とはいえ、待機するべきという判断は皆の総意とは確定していない。ほんの少しの可能性を考えて、スコールは勇者の元へ向かった。
 勇者は少し離れたところで、黙って遠くを見るように立っていた。スコールからは背を向けていて表情は見えないが、朝食を終えて皆の気が抜ける時間にも、ひとりだけは警戒を怠らないようにとしているようだった。
 当然近寄るスコールの気配にも気付いているはずだが、なぜか勇者に振り返る様子はない。スコールは軽く首を傾げ、少し考えてから、薄黄色のマントを引いた。途端、彼にしてはずいぶん大げさな動きで振り返ったのに面食らう。
「ああ、スコールか。どうした?」
 今気付いたとばかりに丸くなっていた薄氷は、マントを引いた主を捉えるとやわらかく細められた。戸惑いから我に返ったスコールが、勇者にテントの中で考えていたことを伝えようとして、あ、と再び音のない声を上げた。
 ――伝える手段がない。紙とペンでも用意すればよかったものを、すっかり忘れていた。
 実際に用意したところで、勇者とスコールでは元の世界が異なることから文字も違うため、筆談ができるとは思えない。当然、勇者に読唇術の心得があるとも思えない。
 用があるとマントまで引いてしまった以上、何か伝えなくてはならないというのに、すべを失ってはどうしたらいいのか分からない。仲間たちが近くに揃っていて、戦闘時でもないこの状況で声が出ないことを恨むのは、却って平和なことだろうが、相手が勇者であるというだけでスコールを焦らせた。
 無理をすれば、掠れた声は出せる。しかし、その『無理』が今の勇者がもっとも厭っているものであることを知っている。無闇に心配させて小言を言わせたうえ、バッツに引き渡されることだろう。勇者から話を聞いて、その時のバッツがどのような表情を浮かべるかも、容易に想像できる。
 小さな唇を何度か開閉しつつ、視線を彷徨わせて逡巡して、結局スコールは申し訳なさそうに勇者を見上げることしかできなかった。「すまない」と唇の動きだけで伝えるが、勇者はスコールを見つめながら顎に軽く手を当てて考え込んでいるようだった。
 伝わらなかったのだろうか、とスコールがもう一度口の動きを大きくしようとする前に、勇者が何かに気付いたように顎に当てていた手を離した。それがそのまま口に触れてきて、スコールは思わず抑えられるままに唇の動きを止めてしまう。
「無理はしなくていい。君には、今日は待機していて欲しい。……君が聞きたかったのはこのことだろう?」
 驚いたように軽く目を見張ったスコールの表情は、正解だということを勇者に伝えている。その様子に安堵したように勇者は頬をわずかに緩めると、口を抑える必要のなくなった手でスコールの髪を撫でた。
「気が強くも律儀な君のことだ。探索に加わりたいが、それでは皆が心配するだろうから、私に聞きに来た。当たっているだろうか」
 さらに続けられた勇者の言葉は、スコールから驚きを奪ってくれるものではない。スコールの反応にまたもや正解だったことを悟った勇者は、無邪気なこどものように嬉しそうな微笑みを一瞬だけ口端に乗せたが、すぐに元の気遣わしげな色に戻った。
「そうであれば、君の予想は正解だ。先程バッツが君と共に残ると言っていたから、安心して大人しくしているように」
 命令口調でありながら、その声音はスコールを心配してくれるものでしかない。ついでに一緒に残ってくれる者の名前を出してくれることは、スコールが自覚していない不安まで拭い去ろうとするようだった。
「さあ、テントで休んでおいで。君の声が聞けないのは、辛い」
 そう勇者が背を押そうとするのに、スコールは抗った。身体をしっかりと勇者へ向けて、髪に埋もれた首へ腕を伸ばす。不思議そうにしながらも、スコールが力を込めたとおりに軽く頭を下向けた勇者に届くよう、スコールは自ら踵を浮かせた。
 言いたかったことを当ててくれた勇者へ感謝を伝えたくて、辛いと言った彼を宥めたくて、スコールは兜に覆われていない白い頬へ口付ける。すると一瞬の間を空けてから、勇者の手が腰を抱き、お返しのように額へ唇が落ちてきた。
 唇同士が触れあえない理由が風邪であると分かっていては、勇者のためにも、心配してくれる仲間たちのためにも、なにより自分のためにも、大人しく静養して治さなくてはとスコールは決意するばかりだった。









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思考が分かるから聞きたいことも分かるという順序
元はスコール相愛されだけでみんなのマント引っ張りまわるだけの軽いコメディにするつもりでした
いつの間にかブレてたけど

勇者もFF1の文字をあらかじめ教えられているのかなあ

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