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DFF中心の女性向け・腐注意ブログ
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2/18でもよかったけどあんまり2→(1*8)ぽさがなかったので
手装備アーティファクトにフリオの腕のアレ、なんて名付けたのを思い出して
よってフリオの腕のリングまわりでわたわたするお話 1*8がちょっとあほのこです








「よし、こんなものか!」

木の枝に掛け終えた、先程まで洗っていた自分の服を眺めてうんと頷く。あとは、この爽やかな風が乾かしてくれるだろう。服と一緒に洗って拭き清めた武器も、太陽の光を余さず返してくることに満足して再び頷き、武器たちを一時の格納庫である異空間へと戻した。
さて、他に洗い残したものはあるかと身の回りを確かめたところで、ふと腕のリングが目に入った。装飾品でもある両腕のリングは、そういえば前回体を洗った時に外し忘れていたことを思い出す。

「これも洗っとくか、ついでだし」

そうひとりごちてリングに手を掛けるが、ずっと着けっぱなしだったこともあってか、外すのに少し苦労してしまった。次に体を洗う時は忘れないようにしよう、などと考えつつ、外し終えたリングを水に浸そうとしたその時、背後から慌てたような声がぶつかってきた。

「のばら、のばらぁ! ちょっと来てくれよ!」
「のばらじゃない! と、どうしたんだティーダ、そんなに慌てて」

敵襲を疑うにも、戦闘が始まった様子はない。とはいえ、ティーダの様子もなかなかに尋常ではない。反射的に反論してから、やや訝しみながら問いかけてみれば、相変わらず慌てたままのティーダはキャンプ地の方を指した。

「タマゴがティナ爆発させてクラウドがイカって兄さんとセシルが作るって!!」
「…うん、少し落ち着け、な? 確かウォルは見回りで、バッツとスコールとジタンは探索行ってたから…オニオンは?」
「オニオンはティナで手一杯っス。だからオレだけじゃ止めらんなくて!」

あうう、とティーダが薄く涙目になるのを見るに、ずいぶん切羽詰まっているらしい。出てきた名前で何となくの予想はつくし、早く向かってやった方がよさそうだ。そう判断して立ち上がり、駆け出したティーダの後を追った時には、地面に置きっぱなしだったリングのことはすっかり頭から抜けていたのだった。





「あの服、フリオニールの?」
「そのようだな。先程までここにいたのだろう」

そう二人が眺める先には、まだ乾ききらないフリオニールの服たち。
見回りから戻るところだった勇者と、探索にから帰ってきたスコールたちが偶然合流した後、なぜかさっさとバッツとジタンが抜けてしまったため(おまけに“ごゆっくり”なんて台詞付きで)、二人で並んでゆっくり歩いていたところで、木の枝に掛けられた見覚えのある服を見付けたのだ。それらが洗濯されていただけなのは明らかで、敵襲や仲間たちの騒ぐ様子がなければ、二人に慌てる理由はない。ここがキャンプに近く、また、フリオニールが再びここに戻ってくるだろう、という予想を立てるのみ。後は、なんだか和んでしまいそうな、そんな妙な気分になってしまったくらいで。
爽やかな風に吹かれる洗濯物とは、かくも平和な光景なのか。つい、そんな感慨深いものを覚えてしまってから、そこから離れようとしたスコールの視界の端に、何やら光るものが入り込んだ。

「なんだ、これ」

ひょいと拾い上げたのは二つの金のリング。どこかで見た気がするんだが、と内心首をひねるスコールの、背後から覗き込むようにしていた勇者が、ああ、と声を漏らした。

「確か、フリオニールが腕に着けていたものではないか?」
「腕…ああ、あれか」

日に焼けた両腕に嵌められた、一対のリングを思い出してみれば、確かに今スコールの手の中にあるものと相違ない。それなのにすぐ思い当たらなかったのは、リングが外されているのをほとんど目にしたことがなかったからだろう。そんな物珍しさが手伝ってか、二人してしげしげと眺めてしまう。何のへんてつもない金のリング、だとは分かっているのだが。

「本当に普通のリングなんだな。ずっと着けてたら跡とか付きそうだ」
「戦っていても外れないほどだからな」

戦いの最中にずるりと抜け落ちてしまうようでは本末転倒なのだから、相当キツいに違いない。何かを使って接着させているわけでもあるまいし。これらを外した跡がどうなっているのか、少し見てみたい気がする。
そんなことを考えている内に、スコールの中に童心にも似た好奇心が浮かんできた。それを実行しようものなら普段であれば悔しさすら得てしまいそうなものだが、この場合比較対象がフリオニールで、その彼にはスコールもだいぶ穏やかな気持ちでいられるほど心を許している。
とどのつまり。このフリオニールのリングを、ちょっと着けてみたいと思ってしまった、ということで。今がひとりならば周りを確認してからこっそり実行しただろうが、生憎とすぐ傍に勇者がいる。とはいえ、勇者に対しても子供じみた見栄はそろそろ落ちついているため、少ない恥ずかしさと好奇心を天秤にかけている状態なのだ。
そう迷っていたスコールの手から、勇者が不意にリングの一方を取り上げた。何事かと訝しむ間も与えず背後からスコールの左腕も取っては、黒いグローブに覆われた手をリングの中へ潜らせる。勇者の意図に気付いたスコールが慌てて身じろぐも、左腕を抑える腕はびくともせず、その上後ろから抱き込まれるような体勢では上手く動けない。確信犯か偶然か、それを考える暇すらなくリングはスコールの左腕に嵌められた。

「おい、ウォル、何のつもりだ!」
「着けてみたかったのだろう?」

そうだった、この勇者、妙なところで勘が鋭いのだった。振り返って見上げた先の真顔で図星を指され、スコールが口籠る。図星は図星であり、勇者の前で自分の子供らしい部分をさらけ出すことに慣れてきたとはいえ、勇者の手で着けさせられてしまうなんて想定から外れたことには、悔しいような恥ずかしいような心地になってしまう。

「どうだ、外れてしまいそうか?」
「…俺は、服の上からだからズレそうだけど…フリオニールは素肌だったから、外れないだろうな」

勇者がさっさと話題をリングに戻してしまったことで、ふたりきりの場所で抱きこまれている羞恥も、好奇心を指摘された狼狽も落ちついて、スコールは左腕のリングに視線を落としては右手でそっと触れた。リングがしっかり嵌まるのが、ジャケットの上からという条件付きであるという事実は、フリオニールと自分の体格の差を露わにしているが、それは今のスコールの機嫌を損ねるには至らない。
そうして平気でいられる以上、そして勇者に好奇心をすっかり暴かれてしまった今、スコールはまた別の好奇心が生まれたのを自覚した。リングから顔を上げ、相変わらず背後から覗き込む形の勇者の顔へと視線を戻す。

「…あんたも着けてみろよ」

私が? と瞬くのを余所に、さっさと勇者の長い右腕を取って刺々しい肘当てを外す。はじめこそ戸惑ったものの、すぐにスコールの意図を悟った勇者は、スコールの好きなようにさせることにしたらしい。肘当てが外され、引っかかるからと籠手まで外されても文句を言うどころか、リングを嵌めようとするスコールをどこか楽しそうに眺めていた。
右腕の肘を通ったリングは、肘の少し上で止まった。それなのにぐいぐいと進めようとするスコールの手を、勇者は自由な左手で遮る。

「スコール、外れなくなる」
「フリオニールが着けてる場所まで上がらないな。分かってたけど」

返答とは言い難いスコールの言葉に、分かっていたならなぜ試したのか、と勇者は言いたくなったが、それがスコールの狙いだったのかもしれない、と思い直した。その証拠に、見上げてきたスコールの目には悪戯げな色が浮かんでいる。

「…これはフリオニールのものだろう。外れなくなったら、彼が困るのではないか?」
「外れなくなったら、無理にでも外すさ」
「君は…悪い子だな」
「嫌か?」
「いや…」

自分を困らせたいらしい、そんなスコールに悪い子だと言いながらかぶりを振ってしまう、嘆息気味に苦笑してしまう理由は、勇者自身が一番分かっている。子供じみた側面を見せてくれることに、以前ほど構えなくなったスコールを愛しいと思ってしまえば、もう勇者には叱ることなど出来なかった。





それは正直、異様な光景だった。

「何、してるんだ…?」

イカもといセフィロスと戦っていたクラウドを収め、彼らのバトルも余所に月兄弟がキッチンで仲睦まじく料理をしようとしていたのをそれとなく阻止し、ティナがタマゴを爆発させた後始末をして、やっと思い出したリングの元まで戻ってきてみれば。そこにはウォルとスコールがいて、それぞれの右腕と左腕に忘れてきたあのリングを着けていたのだから。その上、スコールが困ったようにウォルの右腕のリングに手を掛けて、引っ張っていたのだから。
つい声を掛けてしまってから、知らないふりした方がよかったかもしれないと思ったのは、声に反応したスコールが顔を真っ赤に染め、ウォルが珍しく気まずそうに視線を泳がせたのを、見てしまったから。

「何、と言うと…」
「その……外れなく、なったんだ」
「そ、そうか…」

一体何がどうして外れなくなったのか、そう聞きたいのはやまやまだが、恥ずかしそうに、あるいは申し訳なさそうに頬を赤らめる二人を見るに、今は止めておいた方が良さそうだと判断した。
さて、問題のウォルの右腕に嵌まったリングであるが、位置としては自分が普段着けている場所くらいだろうか。自分とウォルの腕の太さを考えても、だいぶ無理をしたのだと分かる。リングが壊れるなどという心配は欠片もしていないが、締め付けられるウォルの腕の方はそろそろ痛みを訴える頃だろう。二人の熱が移ったように、つい自分まで顔を赤くしつつも、苦笑混じりに傍まで寄れば、スコールがどこか縋るような視線と共に場所を代わってきた。近くで改めて見てみれば、やはりリングはしっかりと腕に食いついている。

「うーん、そうだな、洗剤でも使ってみるか。確か、俺が洗濯で使ったのがあるはずだし」
「洗剤?」
「…あっ…」

首を傾げるウォルに、目を見開いて声を漏らすスコール。とりあえず洗剤を取ってきてからスコールを見遣れば、これまで以上に気まずそうに、そして恥ずかしそうに顔を俯かせていた。それに言及はしないまま、ぬるりとした液体をリングの辺りに落としてやる。
引っ張りますよ、と声を掛けて頷きが返ってくるのを確かめてから、リングに指を引っかけて思い切り引っ張った。

「うわっ」
「ウォル!」

力を込め過ぎて、つんのめったウォルをスコールが慌てて支えたことで、なんとか転倒は免れた。

「す、すみません! スコール、そのままウォルを支えていてくれないか?」
「……分かった」
「よし、それじゃあもう一度…っ」

赤い顔のスコールが、ウォルの腰に回した腕に力を込めるのを確認し、再びリングを引っ張る。しばらくして、ずる、と僅かにリングが動いたと思うと、そのままの勢いでリングがウォルの腕から引っこ抜けた。地面を踏ん張っていた力は後ろへひっくり返るには十分で、片足が宙を掻いてしりもちをついたところで、がしゃりと鎧の鳴る音とスコールの慌てた声が聞こえてきた。

「わ、わっ、重…っ!?」
「あ!」

手を伸ばすもしりもちをついたままでは届くはずもなく、鎧ががちゃりと一際大きく音を立てたと思えば、ウォルはスコールを巻き込んで後ろへ倒れ込んでしまった。重厚な鎧付きの成人男性の重さは相当なものだろう。立ち上がって二人の様子を窺う頃には、慌てた様子のウォルが潰してしまったスコールを助け起こしていた。

「二人とも大丈夫か?」
「俺は平気だけど…リングは」
「ああ、リングなら…ほら、ちゃんと取れたぞ。ウォルも腕は…」
「問題ない」

洗剤で濡れるリングを見せてやれば、スコールはほっとしたように息を吐いた。締め付けられていたウォルの腕にも何ら異常はないようで、こちらもスコール同様に安堵する。すると、やっと思い出したようにスコールが自身の左腕からリングを外し、なんとも申し訳なさそうな視線と共に差し出してきた。

「勝手に借りて、悪かった……俺のせいなんだ」

言外にウォルを責めないでほしいと言うスコールに、ぱちりと瞬く前で、ウォルが軽く小さな頭を撫でてから、スコールと同じような色の視線を向けてきた。そして口を開こうとしたのを、ちょっと待ったと遮る。

「そもそも、俺は何も怒ってないぞ? むしろ、こんなリングでも二人が楽しんでくれるなら、嬉しいよ」
「た、楽しんでって…」
「でも、ほどほどにな? 怪我になったら大変だからさ」
「…肝に銘じよう」

少々苦い顔のウォルが目許を赤らめるのは、本来なら年少であるスコールを制する立場でありながら、自分のせいだとスコールがはっきり自覚して謝ってくるほどのことを、つい見逃してしまった自責があるためだろう。それでも、ウォルがそんな風にスコールにだけ甘い部分を見せてしまうのを、不快だと思うこともなければ、依怙贔屓だと思うつもりもなかった。それは先に言った通り、二人が楽しいと思ってくれるならば、それで仲を深めてくれるならばこれほど嬉しいことはないし、ふたりきりの時くらいお互いに甘くなってくれてもまったく構わないのだ。
だから、ウォルが肝に銘じたことで、ふたりきりの時ですらスコールに厳しくしてしまうようなことがあれば、スコールに申し訳ないし、何より自分も寂しいと思ってしまう。杞憂になるだろうとは思いつつ、ウォルの律儀な言葉につい首を振ってしまったのは、そんな心配からだった。

「その、“肝に銘じる”のも、出来ればほどほどでお願いしますね」

二人が不思議そうに顔を見合わせるのを、リングを腕に着け直しながら、苦笑以上に微笑ましい心地で眺める。
不意に強めの風が吹いて、そこで木の枝に洗濯物を引っかけたままだったのを思い出した。そろそろ乾いている頃だろう、と洗濯物まで足を進めようとしたところで、少し間を開けてから二人がついてくるのに気付く。

「どうしたんだ?」
「それ、もう乾いてるんだろ?」
「私たちも手伝おう」

リングを借りた詫び代わりだろう、二人分の拒否を許さない視線を受けて、思わず笑ってしまった。

「じゃあ、頼もうかな。そっちから取ってくれ」

頷いた二人が洗濯物に手を伸ばすのを横目に、自分もと腕を上げれば、リングが太陽の光を受けてきらりと光った。やっぱり、偶には外しておこうと密かに決心しながら、笑みが零れたままなのを抑えられなかった。









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洗剤を使うことをすっかり忘れてたスコールでした
フリオ視点→第三者→フリオ視点はちょっと見辛かったかもしれない…


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