DFF中心の女性向け・腐注意ブログ
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炎の臭い、響く咆哮、耳を劈く悲鳴。
花を育てていただけの、静かで穏やかな村にはあり得ない要素。今朝は快晴だったのに、立ち昇る煙が空を覆って灰色に染めている。
―――おとうさん! おねえちゃん!?
なんで、どうして、そう幼い脳で叫びながらひたすら走る。繋いでいた手は逃げ惑う人混みに巻き込まれ、気付けば放されてしまっていた。撒き散らされる野生の殺意が、そこかしこで目を光らせている。
走っている内に、いつのまにか少年は村の入り口に辿り着いていた。もう悲鳴はない、咆哮も聞こえない。そこにあるのは、数個の黒い塊と。
「…っ!」
ひゅ、と息を呑む。黒い塊に囲まれるように立つ何者かのシルエット、その背には羽があった。
少年は腰が抜けた体を腕の力だけで動かすが、それもやがて動かなくなった。
シルエットの腕が上がる、唇が何事かを呟く。ああ、終わりが来る。そう覚悟して、目を閉じた。
そうして瞼の闇の中、浮かんだのは白い羽。
―白翼の夢―
「…はっ!」
目を開けた途端、入ってきたのは見慣れた自室の天井だった。しばらく瞬きと息切れを繰り返し、落ちついた頃に起き上がると額を抑えた。額が疼く。
(…また、アレか…)
おそらくはむかしむかしの記憶なのだろう、あれからもう十年は経っているというのに、一体何度夢に見せれば気が済むのだろうか、自分の脳は。やれやれ、と青年―――スコールは頭を振って、ベッドから抜け出した。カーテンから射し込む光は眩しい。今日は、快晴だろう。
階下から漂う良い匂いに、くるる、と腹が小さくなった。空腹を訴えるそこを宥めるように一回軽く叩いてから、スコールは夢を振り払ってドアを開ける。階段を下りれば、キッチンに立つエプロン姿の青年がこちらへ向いた。
「おはよう、今日は遅かったな」
向けられた笑顔は朝に良く似合う爽やかなものだが、スコールの表情はといえばどことなく沈んだもの。言葉に責める響きこそないが、少々寝過ごしてしまったことに対する罪悪感は得てしまう。そんなスコールに青年は少しだけ苦笑すると、すぐに苦味を打ち消して元の笑顔に戻した。
「もうすぐ朝食ができるから、顔洗ってルーネスとティナを起こしてきてくれないか?」
「…分かった」
スコールは青年の言葉に頷くと、洗面台へ向かう。青年―――フリオニールはスコールの背を見送ると、小さく息を吐いた。
また、あの夢を見たんだな。口にはしなかったが、なんとなくスコールの様子からフリオニールはそう悟っていた。夢を見た時のスコールは、いつもより起きるのが遅いのだ。夢を見たことを覚えていても、覚えていなくても。伊達に何年も兄代わりを務めていない。
とにかく、沈んだ気分を上げてやるためにも、美味しいご飯を作ってやらねば。フリオニールはそう意気込むと、エプロンの帯をきゅっと締めて鍋へ真向かった。
洗面台の鏡を覗いて、酷い顔をしているのにスコールは眉をしかめた。あの夢を見た後は、いつもこれだ。きっとフリオニールも気付いているだろうが、もう何年も続いていること、敢えて言われることでもない。ただ、こんな日の朝はフリオニールが気合を入れてご飯を作ってくれるから、それはかなり楽しみだったりする。それこそわざわざ言いはしないが。
顔を洗ってから階段を上がる前、さてどちらからかかろうか。スコールは少し考えて、階段を上がった先の戸を数回ノックしてから、返事も聞かずに開けた。勝手知ったる弟分のこと、これくらいは許容範囲だろう。ドアを開ければ視界に入るのはシーツの山。中身は、言わずもがな。
「起きろ、朝だ」
ぱしぱし、とシーツを叩いてやると、もぞりと山が動いて金髪が飛びだした。シーツの中から現れた少年…ルーネスが目を擦って起き上がるのを待って、スコールは朝の挨拶を口にする。
「もうすぐ朝食ができる。俺はティナを起こすから、先に顔洗ってろ」
「ん…はぁい」
普段は生意気な弟分も、寝起きだけは素直なものだ。ルーネスと共に階段を下り、洗面台へ向かう足音を背に、スコールはもう一つの扉の前に立った。ああは言ったものの、どうしようか。
とりあえず、ルーネスの部屋にした時より少々強めにノックしてみる。頼むからこれで起きてくれよ、と内心願いながら待っていると、中から声が聞こえた。目覚めていたことにほっとしつつ、入るぞ、と声をかけてドアを開けた。
「おはよう、スコール」
「ああ…おはよう」
微笑みながら挨拶を口にした少女、ティナはベッドに腰かけていた。その細い腕の中には、白いふかふかのぬいぐるみがある。相変わらずのお気に入りっぷりだな、と思いつつ、スコールが朝食のことを言うと、ティナは頷いた。
ぽす、と名残惜しそうにぬいぐるみをベッドに置くと、ふわりとティナは立ち上がった。ふわりとは雰囲気やそういうものではなく、ほんとうに"ふわりと"立ったのだ。実際には、足では立っていなかった。細い足は、地面から離れている。
「大丈夫なのか?」
「うん、平気」
ティナの背に現れた桜色の羽を見て、スコールが問えば、微笑みと頷きが返ってくる。ふよふよと浮いて近付いてくるのに、スコールは再びほっと息を吐くと、共に部屋を出た。
ティナは、人間ではなかった。背に翼を持つ"有翼人"と呼ばれる種族だった。いつからか、おそらくスコールが生まれる前から、有翼人と人間の二種族間の確執は存在していたという。それなのに、なぜ有翼人である彼女がここに居るのかは、少なくともスコールは覚えていない。彼女に関してスコールが知っているのは、有翼人であることと足を悪くしていること、浮く程度の魔力しか持たないこと、そして記憶を失っており、人間に対する敵意も持っていないことくらいのもの。
それらをわざわざ考えることもないほど、人間でないティナはこの家に馴染んでいた。そして、それを疑問に思うことも無かった。その上でスコールがフリオニールやルーネスに対するより、彼女と一線を引いている原因としては、ティナが身内目にも可憐な異性であることでしかない。気恥ずかしさを覚えてしまう、それだけのこと。いつの間にかティナに惚れていたルーネスの目が怖いというのも、少しだけある。
食卓には、ふんわりオムレツ、苦味を抜いた野草入りの温かいコーンスープ、フリオニールお手製のドレッシング付きサラダが並んでいた。ルーネスとティナが来るのを待って、揃って食前の号令をかける。いつもの時間と、決して裕福ではなく量も多くない食事に満たされるのは、きっと気のせいではない。やはり気合を入れてくれた朝食に密かに満足しつつ、食事を終わらせた後、片付けを済ませたスコールは自室へと戻った。ごそごそと馴染みのペンダントを取り出し、机の上に置く。
さて、今日は。
“今日こそはおいらを連れてってよね!”
“でしゃばるなカーバンクル! 今日こそは俺様だ!”
“うっさいよイフリート!”
“やかましいわ貴様ら! 主の前だぞ!!”
「…」
脳内に響く少年、カーバンクルと男、イフリート、バハムートの言葉に、スコールは眉を顰める。やれやれと息を吐いて、うるさい、と脳内で一括すれば、喧嘩へ発展しかけていた言い争いがぴたりと止んだ。
“本日は、どちらへ向かうのですか?”
一転して響いた静かな女性の声に、安堵しながらスコールは机の上に置いてある紙を確認するように眺めた。内容は、要点がまとめられた短文と金額、そして地図。
「…ちょっと遠い。この辺のを倒しながら、湖の向こうまで行く」
“魔物どもの弱点は?”
「炎…」
“じゃあ俺様の…!”
「だが、森の中だから炎はナシ」
そうスコールが断定するように言えば、ちょっ!?と慌てるイフリートの声とけらけら笑い出したカーバンクルの声。よほどショックだったのか、一挙に黙ってしまった脳内の声を意に介すこともなく、スコールは淡々と考え始める。
地図を見るに、川が近いため水もナシ。炎は前述の通り。森の中なので雷も危ない。本日駆除する魔物は魔力を持たず、そしてさほど強くない、とすれば。なんだかいつも同じやつになってしまうな、としみじみ思いつつ、氷というのは扱う分には汎用性が高いものだと常々感心する。
「…シヴァ」
“えーまたぁー?”
“む…”
“きゅー”
“当然ですね”
カーバンクルとリヴァイアサンの不満げな響きと、ケツァクアトルの鳴き声、女性、シヴァの満足げな言葉を最後に、彼らの声は止んだ。あんまり個性的なガーディアン・フォース―――G.Fを複数体持つのも、結構大変かもしれない。いくつか手放そうかなんて、もし彼らに聞かれれば泣かせてしまうだろうことを一瞬考えるが、すぐに打ち消した。なんだかんだで、スコールも彼らを気に入っているのである。昔の記憶を失っても構わないか、と思うほどには。
シヴァを装着したネックレスはとりあえず机に置いたままで、スコールは本日の仕事の準備を始める。最近、魔物掃討の依頼が増えた気がする。近年魔物が増加傾向にある、という洒落にならない噂が流れているが、本当のことかもしれない。
「スコール? ちょっといい?」
こんこんと部屋のドアがノックされ、返事を返さない内に開けられた先にいたのは、ルーネスだった。何だ、と視線を向ければ、ルーネスは少し考えてから口を開いた。
「えっと、今日って湖の向こうのやつを倒しにいくんだよね?」
「ああ」
「あのね、そこのモンスターの刃って、よくアクセサリーにもなったりするんだって。だから、その…」
なるほど、と口籠るルーネスを前に、スコールは言いたいところを理解して頷いた。我が家にはアクセサリーを買う余裕などない。しかし、アクセサリーに興味を持っても良い年頃(あくまで外見だが)の女性は、いる。そしてこの少年はその少女に想いを寄せている。よく鈍いだの時々天然だとも言われてしまうスコールだが、さすがにそれくらいは察しがついた。
弟分の年相応な初さに、つい苦笑を漏らしてしまう。
「余分に持ち帰ればいいんだな?」
依頼主への証拠品や商売道具としてのそれらを抜いても、一個くらいなら持ち帰ってくることも出来るだろう。
「! うん、お願い!」
珍しい笑み混じりのスコールの言葉に、ルーネスは一瞬呆けた顔をすぐに輝かせた。まだまだ子供で安心した、とこっそり思いつつ、ついでのフリオニールからの言伝を受け取っている内に、自室で出来る準備は終わっていた。
机のネックレスを首から下げ、依頼の内容を記した紙を懐に、道具袋を背負い、機械文明の賜物である特殊な武器を腰から下げて、スコールは階段を下りる。あとひとつ、必要なものがある。用意を済ませたスコールにフリオニールは気付くと、キッチンから弁当を取って、少額のギルと一緒にスコールへ手渡した。
「塩だったな」
「ああ、そんなにたくさんじゃなくていいから」
「スコール、お仕事?」
ルーネスからの言伝の内容を確認して家の戸へ向かうスコールの背に、"いってらっしゃい、気を付けて"という三人の声がかけられる。いってきますと小さく返して、スコールは起床時と変わらない雲の無い空の下に出て行った。
さあ、行こう。
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導入部、G.Fたちとの会話はテレパシーです
カーくんは元気少年、イフリートは俺様キャラ、シヴァたまは勝ち気お姉さま、バハさまはリーダーで武人、リヴァイアサンは大人しくて無口、ケツァクたんはまず喋れない、な感じで そして持ってるG.Fはこれくらい
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