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DFF中心の女性向け・腐注意ブログ
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たまにはこんなのも

・あっさり死ネタ
・過去輪廻捏造 たぶん12回目くらい
・でも甘い
・ベタ惚れ同士
・ウォルさんはDFF世界用に秩序に造られた人説

以上

もしかしたらなにかに続くかもしれない









「おはよう、ウォル」

一瞬、言葉が理解出来なかった。
目の前、青の瞳、暗褐色の髪、白い肌、額の傷。どこからどう見ても、彼だ。

「…おは、よう」

目の前の彼を"彼"であると理解した以外は、未だ混乱の最中で。たどたどしく挨拶を返せば、彼はおかしげに目を細めた。
起き上がって、辺りを見回してみる。何故か濡れることのない水浸しの床、雲に覆われた空、どこまでも清純な空気。埃も汗も血も、どんな臭いもしない―――聖域だ、違うことなき。
それでも、何もかもがおかしいのだ。まず、自分がここにいること自体が、理解し難い。そして何よりも、なぜ、"彼"がここにいる?

「…スコール?」
「うん?」

本物か?そんな問いを含めて、未だ座り込んだままのこちらに合わせて、屈んでくれている彼の髪へ触れてみれば、さらさらと指をすり抜けた。ああ、この感触は、忘れもしない。
しかし、それでは、なぜ、と更に謎が深まる。
だって、"彼"はもう。存在しない者だったはずなのに。





―――無力、崩壊、絶望、そういった感情を得たのは、初めてだった。

不幸とも運が悪かったとも彼は言ったが、それでもあれほど自分を恨んだのは、失った記憶の中でも無かっただろう。
無限、その果てしなさを、あの時確かに見誤っていた。イミテーション、無機質な人形どもが、こちらの動きをことごとく吸収して返してくることに、いつかに気付いた。そして、自分たちよりも高度な動きはしてこないものの、単純な力の強さや魔力、そういった能力をより高く造られたものが見られるようになったのだ。
自分の行動は自分が良く分かる、とはいえ、すべてを読み切れるはずもなく、自分たちと同じ程度の動きに自分たち以上の能力を持つイミテーションには、相当の苦戦を強いられることが度々あった。
唯一の救いは、他の雑魚に比べて数が少ないこと。それでも、多勢に無勢とはよく言ったもので、イミテーションの群れを退けた後に残る体力は少なく、そんな時に限って強敵が現れるということも何度かあった。
誰も、辛いとは言わなかった。でも、顔には表れていた。
彼はいつでも気丈でいたが、足元が覚束ないこともあれば倒れ込んでしまうこともあった。それは彼に限らず皆がそうであったけれど、時間が止まることもなければ敵が止まることもなく。仲間を減らしていく内に、どうにか残っていた彼も力尽きる時がやって来た。

抱き締める間もなく、光は消えて。

それからは、詳しくは覚えていないが、ただひたすらに敵を斬っていた、気がする。
自分が生き残ろうという意志は、あまり無かった。もう数少ない仲間の為に生きようとしていた、と思う。
たとえば自分だけが残ったとして、戦いが終わったとして、その時光に消えていった仲間がどうなるのかが分からなくて。彼は、ほんとうに消えたままなのか、分からなくて。
恐ろしくて。
それでも仲間を失いたくないのは同時で、だから仲間を守り生かす為に戦っていた。
そのはずなのに。

同じ不安を抱えていたのかは分からないが、気付けば残っていた仲間も後を追うようにいなくなっていて、結局ひとりぼっちになっていた。
何がいけなかったのか。敵が強かったこと、自分が弱かったこと?仲間を守れなかったことか、自分を放棄したことか。
ひとりぼっちになってから迷いに迷った末、再び信念を打ち直した。自分がすべてを終わらせれば、きっと仲間たちは救われる。何も守れなかった自分を許してくれる、コスモスもきっと認めてくれる、そして失ってしまった、彼も。もう一度だけ、と虚無にも近い信奉だけを支えにして、ひたすらに剣を振るった。思うように動かない体を引き摺って、無機質な破片を越えて進み続け、やがて現れたのはイミテーションではなかった。

滑る柄を握り締めて、ひびの入った盾を構えて、地を踏み締めて。まっすぐ見据えた先、対である猛者の、兜の奥。
その表情は、嘲笑っていたように思えた。





「……スコール」
「うん」
「スコール」
「ん、」

名前を呼び続けるのにいちいち返してくれながら、屈んでいたのをしゃがみ込む体勢へ変えた。元々身長差はあったから、それでようやく視線が並ぶ。
いつしかスコールはその身長差への不満を募らせていたようだが、いっぱいいっぱいに見上げてくるのを、密かに楽しみにしていたと言えば怒られただろう。

「なぜ、私は君に触れられるのだろうか」

なぜ、こんな風に視線を交わすことが出来るのだろう。
そう問えば、くすぐったかったのかそれともそれが答えなのか、スコールは肩を竦めて首を傾げた。分からない、と主張しながら、頭の中では考えているらしい。

「…一緒だっただけだと思う」
「と、言うと?」
「いや、分からない。けど…行き先が一緒だったんじゃないかって」

考え考え、そうして眉根を寄せる表情が、懐かしい。見慣れていたはずなのに、それを見られなくなったのは、いつからだっただろうか。
なんで、どうして、失ってしまったのだろう。

「でも…またあんたに会えて、よかった…って、あまり良いことじゃないんだけどな」

そっと苦笑する姿が懐かしすぎて、もう見ていられなくて、引っ込めた手で顔を半分覆って俯いた。きり、と歯を食いしばる。
嬉しい、悲しい、悔しい、色んな感情がごちゃごちゃになってしまって、一体どう名付けたらいいのか。ああ、でも、また彼に会えたのは。本当に。
何かが喉につっかえて溢れ出しそうで、何も言えない。頭の中が整理出来ず、言葉にならない。馴染んだ低音が耳をくすぐっても、とても返せそうにない。
ふ、とグローブに覆われた手が頭に置かれて、撫でられる。驚いて顔を上げれば、泣きだしそうな眦が飛びこんできた。

「…終わらなかったんだろう?」

痛みを抱えた表情に、撫でられていることも忘れて軽く眉を寄せてしまう。それでも問いには頷いて答えると、そうか、と呟きが吐息のように吐き出された。
どうしていなくなったスコールがこちらのことを知っているのか、そんな疑問が頭をもたげるが、それよりもその表情の方が気になってしまって。いつの間にか、彼の手は動きを止めて、頭の上に乗っているだけになっていた。
何も終わらなかった。すべて、終わる前に消えてしまった。ただ、それがあまり後悔と化していないのが、どこか当然のようで、少し恐ろしい。今でも眉を寄せた理由がほとんど彼の表情であって、世界を終わらせなかったことに対するものでは、あまりなかったのだから。
その割合が徐々に偏っていることは、いつと比較しているのかは分からないが、なんとなく自覚している。自分の何かが変わっているということを、なぜか感じている。

「俺…終わらなくてよかったって思ってるんだ」

再び呟かれた言葉に、目を見開いた。

「…"終わらなくて、よかった"?」
「終わったら…このまま終わったら、もう……あんたに会えない気がして」

おかしい、こんなこと思うの、おかしいんだ。そうスコールは手を下ろすと、ゆるゆると頭を振る。
その手が、首から下げたペンダントを握りしめる。グリーヴァという名だと、いつかスコールは言っていた。微笑みが消えた今では、まるでペンダントに縋っているようにしか見えない。

「これは、任務だ。仲間が任務を全うしてくれるなら、それでよかった。でも、ここで…俺は、あんたが残ってよかったって思ってた」

それは、任務や使命とは切り離された、ごく個人の感情でしかなくて。それは傭兵としては許されない想いだったのだろう、だからこそスコールは自責に駆られたのかもしれない。それでも、それだけならまだ良かったのだ。

「でも、でも…怖くなったんだ。終わった後を考えたら、怖かったんだ。こんなの、駄目だって分かってたのに!」

どうしよう、と続いた言葉は震えていた。

「悔しかった……嬉しいんだ」

これまで言葉を挟まなかった理由は、彼の言葉を切りたくなかったから。
今、何も言えないのは、きっと衝撃を受けたとか憮然としたとか呆然としたとか、そういったもので言い表せるものではなく、また先程のように感情が入り混じっていたからでもない。
でも、それは、彼の思うところは。自分も"そう"だった。
私も、の一言が紡げない。みっともなく震えてしまいそうで、未だ泣きそうな彼に手を伸ばすことしか出来なかった。
腕の中に閉じ込めた体温は、懐かしいのに失う時には得られなかったもので。縋る対象を自分へ移してくれたことに安心しながら、目を閉じた。

「…終わりは、共に迎えよう」

注意したのに結局震えてしまった声を残念に思いつつも、返ってくる頷きに笑みが漏れた。互いの表情は分からないが、きっと泣き笑いのようなひどい顔になっているのだろう。
胸の熱さが心地良い。
しばらくそうして、やがてスコールが軽く腕を突っ張った。それを合図に解放すれば、すっと立ち上がる。そうして見合うも、表情はいつもの見慣れたそれになっていた。
あっち、と腕を上げて黒い指先がどこかを指し示す。

「行こう。みんなを待たせてる」
「そうか」

確かに、指された先にはいくつかの光の気配がする。出てこないのは気を遣ってなのか、覗きにこないだけずいぶん気の良い仲間が揃ったものだ。いや、ここに来たばかりの自分の状態を思い返すと、気付いていなかっただけというのが正しいのかもしれないが。
そこで、なるほどと気付く。自分が最後だと分かったのは、皆がここにいたからなのか。あの光たちに囲まれるのを思い出すだけで、自然と笑みが漏れる。
彼とふたりきりでいられるのも嬉しいが、あの仲間たちと共にいられるなら、それはきっと幸福なのだろう。
腕を掴まれ引っ張られるのに任せて、足を進める。聖域であって聖域でないどこかへ、皆がいる場所へ。

「スコール」
「ん?」

腕を引っ張り返して、呼びとめれば振り返る相貌。
ふたりきりである内に、と。触れ合わせた唇は、温かった。





「土に塗れ血に溺れ、尚笑んで逝くとは……理解出来ぬな」

いや、と呟きは地へ落ちて。

「……出来なくなった、か」









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最後はガーさん
過去輪廻で死んでった仲間はどうなったのかなと妄想した末の産物


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