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DFF中心の女性向け・腐注意ブログ
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やっと書きたいところまできた感じ あともう少し…かなぁ
忘れそうだけど宝石ネタなのですよ 結構ごっちゃになってますが
ウォルさんが水っぽいというのはだいぶ前にSSSにしたネタで、そういうの書きたいってのもあるからこうなった

ただこの宝石、実物とか見たわけじゃないし画像とか文字でしか知らないから特徴とか間違ってるかもしれない…けどとりあえずここじゃそういうもんなのねって感じでスルーしてもらえると嬉しい…で…す…げふ

あ 相変わらずおっとめですすいません










水場までの道中、さほど距離がない間も沈黙したまま歩き進んでいく。
先導をかう彼の数歩後ろで、マントのない背中を眺める。あの特徴的な兜が外されている姿には慣れてきたが、マントの下をちゃんと見たのは初めてだ。手を引かれてテントを出た時は、繋がれた手ばかりに意識がいってしまっていて、その背中なんて見ていなかったものだから。本当は月影に淡く照らされている髪を眺めたい気もしたが、そこまで顔を上げてしまうと、はぐれていないか確認しているのだろう、時折振り返る彼の視線とぶつかってしまいそうで、出来なかった。
やがて視界が開けて、小さな湖が現れた。勇者が傍らに膝をついて器を洗い始めたのに倣い、隣に並んで残った器を水に浸す。洗うとはいっても、入れたものが汚れる方が難しいスープでは、濯ぐ程度で済んでしまう。ついでに持ってきた入れ物に水を汲んでしまえば、用事はそれで終わりで、すぐ戻ってもいいものを、月光を反射する水面の青さを目にして、立ち上がることも出来ずに視線を奪われてしまう。満点の星と穏やかな闇に、辺りの静けさはよく似合う。
ふと隣の勇者をちらりと見遣れば、彼も器を傍らに置いて同じように湖を眺めていた。澄んだ水の光に照らされて、ぼんやりと浮かぶような横顔に見惚れそうになるのを、慌てて湖へ視線を戻すことで回避して、そして映った月を視界に入れて。
その色が、どこか、何かで見た色に被った。月は白く黄色いのに、なぜ水面に根付くその光は白く青いのだろう、そう思いながら、手は自然と懐のあるものに触れていた。素手で触れるそれは、不思議と冷たい。

「…分かった」

ぽつりと呟いた声に反応して、勇者が目を向けてくる。取り出して目の前に掲げてみせるのは、勇者と再会する前に拾ったあの宝石。白く青い光沢の石。

「たぶん、ムーンストーンだ」
「ムーンストーン?」

繰り返す勇者の言葉に頷くこともなく、宝石を通して青い水面を透かし見る。これほど透明度の高いものはそうないだろうが、宝石に詳しくない自分には、その価値はよく分からない。それでも、名前に違わず月光によく似たそれを、ただ綺麗だと思った。冷たい色なのに、ひやりとした温度なのに、冷たさを感じない。それがまた隣の彼に似ているように思えて、確かめるように見上げた先で、ばちりと視線が重なる。ここに来るまでは避けていたそれを、なぜか今は落ちついて受け止めることが出来た。
闇の中でも浮かび上がるような、深くなった氷のような青と真向かって、また思うのは綺麗だということ。

「月の光に似てるからって名付けられた宝石、だったと思う。合ってるかは分からないけど」
「…いや、きっと合っていると思う」

確かにその色は似ている、と目を細めて肯定してくれたのが、単純に嬉しい。なぜか手に握る宝石の冷たさを感じることだけで、これまでに散々させられてきた緊張も忘れ、自覚した感情に振り回されることもなくいられる。すると残るのは妙な意地でもなければ羞恥でもなく、その嬉しさだけに任せれば、いつもは寄ってしまう眉根も解けて頬が緩む。どことなく言葉が稚い調子になっているのも、きっとその所為だ。
隣の勇者は物言いたげに唇を動かしたが、結局止めた。その顔を湖へ向けて再び眺めている様子を少し見つめてから、湖へと視線を向ける。水汲みを終え風も吹いていない中、水面を動かすものはなく、映った月は歪むことなく水の中で浮いている。この宝石を沈めたら融けていきそうだ、そう思ってしまうほど水は澄んでいて、月の光も宝石の光も水によく似ていた。
まるで水が光を取り込んでしまったようで、そう考えて、いつから自分はこんなロマンチストになったのだろうかと、おかしく思う。光が融けるなら、自分もその中に融けてしまえそうだ、なんて。
途端に水が恋しくなって、思わず身を乗り出して水面へ手を伸ばしたところで、唐突に引き戻された。見れば、どこか必死な表情をした勇者が強く腕を掴んでいる。何をしている、とその双眸は言っているのに、勇者は何も言わず、そして自分も声を出せずにいる。水に触れてどうしたかったのか、それを問われてしまれば答えられないのが自分でも分かっていて、だからこそ何も弁解できない。

「…痛い」

力の強い勇者に目一杯掴まれては、骨が軋んでもおかしくなさそうだ。痛みに顔を顰めてそれだけ訴えるが、力は緩むも腕が放される様子はない。無理矢理振りほどくわけにもいかず、仕方なく、自分でもよく分からないが確かではある理由を口にする。

「水に触りたかった、それだけだ」
「……」
「…暑かった、から」

理由の理由が下手な嘘になってしまったことは自覚している。結局ただの衝動でしかなかったことが伝わればいいのだが、それでも彼は腕を放してくれそうにない。眉を寄せて、睨むようにこちらを見つめてくるだけだ。勇者には水に飛び込むようにでも見えたのだろうかと考えて、それも悪くなかったと思えることに自ら驚く。
もしかしたら、暑いのはあながち嘘でもなかったのかもしれない。彼に掴まれた箇所は、熱いのだから。それでもその熱は今までのような混乱はもたらさず、不思議そうに彼を見返すだけの余裕はあった。
ふ、と勇者は息を吐くと眉根を解いた。引き延ばされていた口元が、ようやく動き出す。

「君は…見ていない内に消えてしまいそうだな」

それは勝手にいなくなるということなのか、リーダーらしい不安か。そんなことを言ったら、彼こそひとりでさっさと進んでしまいそうなものなのに。

「…“個人行動を慎め”?」
「いや、それは…それもあるが、そうではないんだ」

何だよ、と首を傾げようとしたところで、腕を掴んでいた手がようやく放されて、そしてその手が頬へ伸びてきた。硬い手のひらは温かく、その意外な白さに反した温度に撫でられて、今度は頬に熱が集まりそうになる。
一方で、彼の表情がどこか切な気なのが気になって、落ち着いてはいても安堵はさせてくれない。そうして、勇者の言いたいことを理解した気がした。
きっとそれは、はぐれることでもなく、先立って進むことでもなく、そこで止まること。

「…どうせいつかは消えるじゃないか」

吐き捨てるように呟けば、上った熱が冷めていく心地がした。
遅かれ早かれ、様々な要因があれど。地に伏せるか光に消えるのかは、当然解らないが。その時には、彼が心配してくれたこと、テントまで運んでくれたこと、微笑んでくれたこと、料理を苦手だと申し訳なさげに告げたこと、湖を眺めたこと、それらの事実も消えてしまうのだろうか。触れてくる手のひらの温度、腕の確かさも掴んでくる力の強さも。その目が綺麗だと、感じたことさえ。剣を結んだことも、認めて送り出してくれたあの時も?
自分で考えておきながら、ひどい虚しさに襲われる。失くすなんて嫌だ、無かったことになるなんて、絶対に嫌だ。彼に向ける感情には未だ名付けられていないが、そうはっきり思えるのは確かだった。ただ、思ったところで叶わない可能性も十分にあることは、元の肩書き上よく分かっている。誰かを、何かを、自分さえ失くしかねないことには、慣れていたっておかしくないのに。きっと自分は、バッツやジタン、そして薄らと覚えている元の世界の仲間たちのように、この勇者のことも受容しているのだろう。
腕を掴んできた時とは反対に、勇者の手にはさした力も込められておらず、視線を宝石へ落とせば手のひらは僅かに頬を滑った。無意識に頬を押しつけてしまうのは、虚しさに冷めてしまった熱を求めているからなのだろうか。

「スコール…」

小さく名前を呼ばれても、顔を上げることが出来ない。一度遣った視線が宝石に囚われて、放せない。
そういえばこの一時で、何度名前を呼ばれただろう。それも無かったことになってしまうのは、仕方がないことだと分かっていても、苦しい。

「…同じ消えるなら、ここの水に融けるのもいいかもな」

この月の光のように融けてしまえたら、宝石のように塊になって残ることが出来るだろうか。消えた後にも、何かを残せるのだろうか。
息苦しささえ感じながら、口角が上がるのは誤魔化し笑いか諦めか。ぎゅう、と宝石を握りしめると、目頭が熱くなった。
もし何か残せるのなら―――真向かって見つめてくれる彼に残したいと思う。驚かされたことも、混乱させられたことも、羞恥を得たことも、嬉しいと感じたことも、すべて一塊にして。ひっそりと、その傍らに在ることが出来るなら。そうすれば、彼にとって過去形でいられずに済むだろうか。
そんな願いを込めて、握り締めていた宝石に口付けた。理由など分からない、ただ衝動にも似て、自然とそうしただけだった。

「駄目だ!」

唇にひやりとした冷たい感覚を得たところで、目の前の勇者が唐突に叫んだかと思うと、頬の手が肩に移って思い切り引き寄せられた。それは一瞬で、何が起こったのかを理解したのは、鎧の硬さと冷たさを押しつけられるように知った後だった。自分のものと違う硬質の髪が頬に触れ、肩にあったはずの手は背中に回っている。
勇者に、抱き締められている?
なぜ、と混乱しながら、反射的に離れようとしても腕は外れそうにない。少し暴れたことで彼の力強さを余計に思い知るが、それは混乱から救ってくれそうにない。そのせいで、ぽろりと手から宝石が滑り落ちたことにも、気付けなかった。

「は、はなせ…っ!」
「……」

分からない、意味不明。こうして抱き締められていることも、勇者が放してくれないことも。抱き上げられた時は、テントに運ぶためという理由があったことは分かる。なら、今のこれはなんなんだ。
いくら暴れど動かないだろう腕に、結局抵抗するのを諦めはしたが、そうして残ったのは疑問だった。密着されていることで表情も窺えず、どういうことだ、と問うことしか出来ない。その声も、掠れてしまう。

「…止めてくれ…」

少ししてから聞こえてきた彼の声には苦渋が滲んでいて、また瞠目する。
一日にも満たない短い時間で、何度も驚かされてきた自覚はあるが。これは今までのどれとも違う、彼の意図がまったく分からない。今では自分が彼へ向ける感情も知って、それでも上手く名付けられないままで、おかげで勝手に振り回されていたことも分かる。なら、彼の方はどうだったのか。自分が尊敬だけで説明がつかないように、彼のそれは本当に心配だけなのか。その苦渋は、心配のそれだけなのか。

「意味が…分からない。あんたは、何を考えている…?」

それだけであって欲しくないような、そんな願望を見ないふりして、あくまで理性的にと自分に言い聞かせながら問う。しかし声は掠れたままで、その上震えているのだから、感情が多分に混じってしまっていることを否が応にも思い知らされてしまう。その感情すら、まだよく分かっていないのだから、入り混じるのもある意味当然なのかもしれない。理解出来ていない感情など、抑えようがないだろう。抵抗を止めたことで、ほんの少し腕の力が緩められていたことに、寂寥にも似た気持ちを得たことは分かるのに。
いつのまにか宝石の冷たさを取り落としただけで、心がざわめいたように落ちつかない。この腕の中から抜け出したいとも思う、寂寥との矛盾。抵抗を止めてなお、体は緊張して強張っているのはそのせいだろうか。

「…ウォル」

ぽつりと口にしたのは、誰が言い出したかも分からない勇者の仮の名前。返答もなしにただ抱き締められているだけの状況が、苦痛とは異なるものの耐え難く、とはいえ力で劣る以上抜け出すことも出来ず、どうにもならなくて思わず呼びかけただけだった。名前に反応するように頬に触れていた髪が離れ、外気に触れてその冷たさを感じる。上げられた彼の表情には、先程の声通りの苦渋が見て取れた。

「私は、」

これまで言い淀んでいたようにも見えたのに、それは思ったよりも毅然とした口調で、水のような色をした双眸はしっかとこちらを見つめている。背に回っていた手は、いつの間にか肩を掴んでいた。

「君に、消えてもらいたくはない。そう願わずにはいられない」
「……」
「出来ることなら、こうして…君の傍らに在りたいと思う」

混乱も限界突破したなら、逆に冷静になれるものなのだろうか。それが、呆然に似たものだとしても、結局理解出来ていなくても。おそらく丸く見開かれているだろう目のおかげで、常よりも広い視界の中、勇者の表情は悲痛そうにも見える。言葉は彼の哀願なのだろうか、しかし、それは彼の感情を教えてくれるものとはなってくれない。言葉通りの願望は分かってもどんな感情によってそう思うのか、己の感情すら分からないままのくせに、やはりそれを知りたいと思ってしまう。
何も言えなくて、口を噤んだままの自分をどう思ったのか、勇者は更に言い募ろうとする。

「知らぬところで、君がいなくなってしまうのではないか。私には、それが恐ろしい」

あんたでも恐怖など感じるのか、と一瞬失礼なことを思いつつ。しかし、誰よりも仲間の身を案じているのもこの男であったとすぐに思い直した。そう、自分も彼の仲間だから、でなければ彼がそんなことを自分なんかに思うはずもないのだと。
なのに、勝手に期待して、浮かれてしまいそうになるのは何故だ。

「…心配、されるほど…弱く、ない」

勇者に過小評価されているとは考えていなかったが、口から出たのはそんな言葉で。本当に否定したいのは単純な能力のことではなくて、たぶん、得てしまった期待の方なのに。ただの誤魔化しとも言えそうな、そして口にしてから自分自身でもそう思ってしまった返答に、それでも勇者はほんの少し表情を和らげて頷いてくれる。

「ああ、君は強い。あの時も、勝ったのは君だったからな」
「…それは…」

違う、と言いたくなったのを抑えて、代わりに視線を外して俯いた。
勝敗が単純な力の優劣を示すものなのか、そうであろうとなかろうと、あの時の勝敗を引き合いに出されても、なぜか頷くことは出来なかった。彼にそう認められるだけの強さを持てているとは、思えなくて。
彼にそこまで心配をさせてしまうというのは、自分が弱いからというより、彼が強いからではないのか。もし自分がその隣に並べるほど強ければ、消えてしまうだなんて、きっと思われなかっただろう。自分にも譲れない信念、そして覚悟もある。ただ、彼のそれはあまりに確固としていて、眩しくて、とても敵わないと思っているから。
―――ああそうか、と唐突に気付いた。自分が彼へ抱く尊敬は憧憬であって、認められてもなお、敵わない存在であると信じ、そうあることに安心してしまう程強いものであるということに。
ただ、それを言葉にするつもりはなく、言葉にできるはずもなく、また黙りこくるしかなくなってしまって。
ふと肩の手が離れたと思うと、そっと頬に触れてきたのにつられて、ゆっくりと視界を上向かせた。

「それでも、いや、だからこそ…か」

瞬く先で勇者は目を伏せ、呟いてから言い直し、そこで自分で納得した風でもあった。今まで散々置いていかれはしたが、自己完結をされてしまったら、もう自分にはどうしようもない。自分の棚上げであることも分かっているが、そうしてでも彼の真意を知りたいとどこか必死だった。

「…何、だよ」

口が渇いて声が掠れる。
どうか置いていかないで、教えて。俺はあんたにとって、仲間、子供…どんな存在?
伏せた瞼が開かれ、薄氷の目に射抜かれる。それは今までになく真摯で、彩に見惚れる余裕もないほど強く。
息が、出来ない。

「私は、君に惹かれたのだろうな…だから、恐ろしい」









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まだ小話は続く…



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