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DFF中心の女性向け・腐注意ブログ
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ちょっと前に書いた痛覚のないウォルさんな話 さすがに味覚は止めときました
そんな特殊設定なのでご注意 あと血とか傷とかそういう描写が苦手な方もご注意(濃くはないですが)
ウォルさんがDFF世界用に造られた人間設定も微妙に意識してるかも
CP出来あがる前でウォル→←←スコっぽい








元々、違和感はあったのだ。滅多に色を変えない表情、強靭すぎる精神、だからといって隠しきれるはずがない、それ。
わざと傷を抉るように、傷を診る指先に少しだけ力を込めてみるが、その表情は常の涼しげなものと何ら変わらなかった。

「すまないな」

違和感が形になっていく感覚に、治療の手が引き攣ってしまったのを、どう捉えたのか。高い能力を有したイミテーションを複数相手取った結果、ケアルでも回復しきれないほどの怪我を負って再会した勇者は、テントの中でも光を孕んで見える薄青い双眸を僅かに曇らせ、謝罪を口にした。
何に対するものかも分からないそれを、黙って受け取る気にはなれず、「別に」と返す。そもそも勇者が複数のイミテーションを相手取る羽目になったのも、元々対峙していたイミテーションの攻撃によって弾かれた先で、運悪く別の世界へと引き込まれてしまったためで、多くの怪我を負ってしまったことも含めて、勇者に非がないのは明らかなのだ。

「あんたのせいじゃないだろう」
「いや、君も休むべきだろうに」
「それは俺のセリフだ。それに、こっちは二人だったからな」

勇者とはぐれてからも、クラウドと共にイミテーションを掃討し、そして勇者を探して歩き回った。つまり、それだけの余力があったのだ。そうか、と呟いた勇者は完全に納得した風ではないが、ひとまずの言及は止めたらしい。
まったく、と溜め息を吐き出しそうになるのを、寸でのところで耐えた。仲間のことは気にかけておきながら、自分のことはまるで頓着しないのだ、この勇者様は。それが、また違和感を増す一因でもある。
上腕部の裂傷に包帯を巻き終えて、ふと、先程傷を抉った指先が目に入った。爪の間に血が入り込んでいて、その色が赤いことをわざわざ確認した自分に気付き、嫌気が差す。
勇者は勇者であって、女神に忠実な光の戦士であって、秩序の戦士をまとめるに相応しいリーダーには違いない。こんな違和感は確かめる必要はなく、無視してしまうべきなのに。
なぜ、気にしてしまうのだろう。

「スコール?」

訝しむように名前を呼ばれ、我に返る。血の残った自分の手から視線を外し、緩く首を振って、なんでもないと言外に伝えたつもりが、勇者に覗き込まれてしまった。

「どこか、痛むのか」
「え?」

予期していなかった言葉に軽く目を見開けば、勇者は傷を抉った時には動きもしなかった眉根を寄せていた。こちらの怪我など有って無いようなものだった、とまでは言わないが、勇者に比べればずっと軽いものだったのだ。治療を済ませた以上、思い当たっても肩にもらった打撲が僅かな鈍痛を訴えるくらいで、顔に出るような痛みでもないのに。
もう一度首を振るも、勇者も今度は引き下がる気はないらしい。

「苦しそうな顔をしている」

不意に手が伸びてきて、籠手の無い指で目許に触れられたのを咄嗟に払えなかったのは、勇者の言葉に少なからず驚かされてしまったから。眼前の勇者が見たことのない、それこそ痛いものを見るような目をしていて、そんなに自分は酷い顔をしていたのかと意識の端で思う。
ただ、自分がそんな顔をした理由が分からない。どうして勇者がそんな顔をするのか、分からない。
返事に迷い俯いた先で、再び自分の指先が目に入る。爪の隙間の赤を見つめそうになるのを、拳を握って隠すことで抑えた。
困惑を飲み込んで、何でもないと首を振り、目許の指が離れるのを待って口を開く。

「…あんたは、自分の心配をしていればいい。傷、結構酷い方なんだぞ」

分かっているのか、と自覚を促すように口にしてから、相手を責めるような言い方になってしまったのに気付くが、言ってしまったものはもう引っ込められない。しかし、勇者のことで付き纏う違和感を抜きにしても、この男が色々と自覚の足りていないことは、常々感じてもいた。
それは例えば、クリスタルを求める旅路。仲間がひとりになることは懸念しながら、勇者自身はひとりで進んでいたのだという。
実際に単独行動だと指摘され、反発して剣まで交えた身としては、そのことを後から知った時に苛立ちすら覚えてしまったものだった。しかし、勇者の行動を目にする時間が増えるにつれ分かったのが、この勇者は自己犠牲が過ぎる上、それを無意識下で行っているということだった。まるで、それこそが役目だと言わんばかりに。
それに気付いた時、また妙な苛立ちを覚えてしまったが、その向く方向は勇者にではなく、この世界にとでも言った方が正しかった。勇者が仲間たちの誰よりも記憶を失ってしまっているのは、そうした役目に無理矢理従事させんとしているからのように感じてしまうのだ。それを口にしないのは、勝手な憶測によって神や世界を侮辱することを避けているからではなく、勇者を否定したくないからに他ならない。
自身が傷を負っていても、仲間たちの治療を優先させてしまうような男を。今でも、こちらの怪我が軽いと分かってようやく細かい治療を受け入れて、なのにこちらの心配ばかりするような男を。自分も、それは勇者の性格によるものであるだけだと、思いたくて。

「怪我したら、ちゃんと治させろ。痛い時は痛いって言え」

零したのは本音であり、そして自分が得ていた違和感をそれとなく示唆してしまうものだった。しかし後者がそうだと気付くのは少し後で、勇者が驚いたように僅かに瞠目し、そしてゆっくり瞬いて何かに納得したように頷いてからだった。

「…そうか、君は…いずれ悟られるものだろうとは、思っていたが」

口にしてしまった失言に自己嫌悪を抱くより先に、語らぬ秘密があるのだと認めるに等しい勇者の言葉に顔を上げる。明かされることを期待しているとは認めたくない、しかしこの勇者がひた隠すものが何なのかを知りたい、それら入り混じった気持ちが表に出てしまっているかどうかは、真顔に戻ってしまった勇者の表情からは分からない。
勇者は目を伏せると、血の滲んだ包帯に触れた。

「私には、痛みが分からないのだ」
「っ!」
「いつからか覚えはないが、少なくともこの世界では既に痛覚を失っていた。だが、言わない方がいいことだと、なぜか知っていた」

だから黙っていたのだが、と瞼を上げてこちらに向いた表情は、苦笑めいたものだった。
確かに、予想はしていた。燻っていた違和感は、これではっきりした。しかし、実際に明かされると、それはそれで衝撃を受けてしまうものらしい。息を飲んで思わず見つめた双眸が、こちらを気遣うように見つめ返してくる。
そして、勇者が言った通り自分は苦しそうな顔をしているのだと、ここで初めて自覚した。何かが胸に詰まって込み上げてきそうな感覚は、“言わない方がいいこと”を勇者に告白させてしまったことか、痛覚を失っているという事実か、あるいは両方からなのかもしれない。
少なくとも、傷を抉って確かめた行為に対しては、強い後悔を感じた。汚い好奇心で以て安易な行動をしてしまったのではないかと、罪悪感にまた胸が詰まる。あの行為の意図に勇者は気付いていたのだろうか、気付かれていなくても謝るべきか、それとも黙っていた方がいいのか。

「…すまない、やはり言うべきではなかったな」

迷っている内にまたかけられてしまった謝罪に加えて、手のひらが頬に触れてきた。温かい、大きな手のひらに、硬い肉刺の痕が沢山あるのを頬で感じて、剣を握り擦れて血を流しただろう時も何の感覚も得られなかったのかと、ふと思う。考えるなと自分に言い聞かせるにも、どうしても暗い感情に沈みそうになってしまう。

「君に、そんな顔をさせたかった訳ではないのだが」
「酷い顔、してるのか…?」
「…泣きそうな顔だ」

ならどんな顔をさせたかったのか、とは思っても聞けなかった。そんなことは、勇者にも分からないだろう。“泣きそう”と称された表情を自分が浮かべている訳も、苦しみが過ぎたものか、今はまだそんな認識でしかない。
それでも、勇者に同情したり哀れに思ったりしたのでは、決してないと言いきれる。ならば、自分が勝手に悲しんでいるだけなのだろう。
記憶も痛みも、神と世界に奪われてしまったのかと。たとえ痛覚の欠如が先天的なものだったとしても、それにつけこまれたのではないかと疑ってしまう。傷も厭わず、気力の尽きるまで戦い続けられる戦士として。
仲間に言わない方がいいことだと、勇者が認識していたのもわざと残されたものではなく、仲間想いの勇者が自覚したものだろう。
思い当たる理由がなくても、それらが自分にとって悲しくて、すごく嫌なことだと思っている。

(そう言うあんただって、苦しそうなのに)

自分に向けられる表情には、翳りが見える。なのに、頬の手は宥めるように優しく動くのだから。
迷いなく凛然としていられる勇者に、隠し事をさせてしまっていたのが、他ならぬ自分たちの所為だと思うとやるせない。告白したことを勇者に後悔させているのがこの場の自分だと思うと、腹立たしい。自分が言わせてしまったに等しいというのに、それを差し置いて泣きたくなる気持ちは、自分の心なのに理解出来ない。

「言うべきじゃない、なんて。そんなことない」

やっとのことで絞り出した声は震えていて、勇者がその顔に戸惑いを浮かべた。手が離れて、前髪が揺れる。

「しかし…」
「今まで誰にも、言わなかったんだろ? 物事をはっきり言う割に、抱えてたんだろ、ひとりで」

明かして欲しかったのか、隠したままでいて欲しかったのか、自分の希望はどちらにあったのだろう。ただ、せめて、勇者が痛覚のことを告白したのは、抱えたものを吐露することで少しでも楽になるためで、自分になら話してもいいとちらとでも思ってくれてのことなら、勝手すぎる自分も少しは救われそうな気がした。

「傷が痛まなくたってあんたはあんただし、いつも眩しいし。俺は、あんたがいつものまっすぐで眩しい奴でいるなら、それでいい。俺が嫌なのは…たぶん、それを隠さないといけないと、あんたが決めつけていたことだ」

痛覚が無いと伝えれば、きっと仲間たちは自分が痛いかのような顔をするのだろう。それを予期して隠していた勇者は、仲間たちにそんな顔をさせるのを厭ったのだろうが、その仲間たちにとっては勇者に隠し事をさせてしまっていたことの方がずっと辛いだろうと、誰に聞いた訳でなくとも確信出来る。

「あんたが、あんたの感情で言いたくないだけならいい。でも、俺たちを気にして言えないっていうなら、それは杞憂だ。どっちにしたって、怪我しておきながら痛くないからって治療もさせてくれない方が、ずっと嫌なんだ」
「スコール…?」

必死で言葉を口にしている内に、また本音を吐露していたことに気付かず、その本音が勇者を驚かせているというのに、ずいぶん長い台詞を口にしたせいで喉が渇いたことしか、気にならなかった。珍しく目を丸くしている勇者を怪訝に思う余裕もなく、言いきってから息を吐き出して、握ったままだった拳の力を更に強めた。
すべて憶測に過ぎないのに皆の代弁だと装って、自分の言いたいことだけ言って、勇者から言葉を奪っていることも分かっている。それでも省みられるほどの冷静さより、どうか分かって欲しいと懇願したい気持ちの方が強かった。勇者がいなくなってしまうことだけは、たとえ自分らしくないとこの場で勇者に思われようとも、どうしても避けたかった。
だから、まるで睨むように見上げる先で、勇者が見開いていた目をすがめて口元を綻ばせただけで、自分でも驚くほどに安堵してしまう。

「…私も無闇に傷付くつもりはないよ、スコール」
「なら…」
「だが、わざわざ広めることでもあるまい」
「それは…まぁ、俺以外にも勘付いてるやつはいると思うが」

セシルやクラウドが、時折物言いたげに勇者へ視線を遣っていることを知っている。薬師を経験しているだけに意外と治療に詳しいバッツも、恐らく気付いているだろう。
こちらの予想に驚いた顔ひとつしないあたり、勇者も分かっていたことなのだろうが。

「私は、仲間に恵まれているのだな」

そっと息を吐いて感慨深げに呟いた勇者の、苦味の混じらない小さな笑みに、言葉を失って目が外せなくなる。しかし微笑みは一瞬で、ふと視線が落ちたと思うと、長く握り締めていた右の拳を取られ、思わず肩が揺れた。体が強張ったのを気にする様子はなく、勇者は拳をこじ開けて爪の食い込んでいた箇所から細く血が流れているのを見ると、軽く眉根を寄せた。
剣を握っているだけに常人以上の握力を有しているのに構わず、拳に力を込めていたことは自覚していたが、まさか血が滲むほどだったとは。勇者への懇願で頭がいっぱいで、自分のことに気が回らなかったらしい。
呆然と手のひらに出来てしまった傷を眺めている先で、勇者はふと掴んだ手を自分の方へと寄せた。反射的に引き戻そうとするも、しっかり捕らえられてしまった右手は動きそうにない。

「君も、あまり人のことは言えないようだ」
「ウォ…」

名前を呼ぶ声が不自然に途切れる。伏せた睫毛の銀が手首に触れそうなほど近付いたと思うと、ぬるりとした感触が手のひらを這った。
それが勇者の舌だと気付いて、何をされたのかを悟った途端、心臓が一際大きく鳴った。いっぱいいっぱいに見開いて広くなった視界の中、勇者は手のひらから顔を上げて、静かに告げてくる。

「君が私にそう思うように、私も君には傷付いて欲しくないと思っている」

勇者の言葉を耳に入れ、脳へと伝えたところで、一気に顔が熱くなった。なんて、優しい声音で言ってくるのか。喜べばいいのか驚けばいいのか恥ずかしく思えばいいのか、出来ることなら逃げ出したいところだが、生憎と右手は掴まれたまま。
まっすぐ見つめてくる、薄い氷のような色をした目が見ていられなくて、せめてと俯けば額に手が触れて変な声が漏れそうになった。

「スコール? 熱が…」

あるのか、という勇者の問いが終わる前に、必死で手を振り解いて立ち上がった。背後で勇者がもう一度呼びかけてきた気がしたが、聞こえないふりをしてテントを出る。ちょうど薪を集めてきたクラウドが驚いた顔でこちらを凝視してきたが、構わずその横をすり抜けた。
キャンプからさほど遠くもない水場まで走り、ようやく立ち止まると、緩い風の音とそれをかき消さんばかりの心臓の音だけが耳に響いた。

心臓が跳ねるのは走ったから、そうに違いない、そうだと思いたい。息が切れているのも、そのせいなんだ。決して、勇者のせいでは。

水面を覗くことも憚られるほど熱い頬を冷ましたくて、右手を上げたところで意図せずつけてしまった傷が目に入る。薄く皮を破っただけの軽いそれは、すでに血を止めていた。
指の方に流れた血の跡が残っていたのを見て、水で洗おうかと一瞬考えるも、今の顔を水面に映したくはないため却下する。逡巡して、結局血の跡を自らの舌で拭ってから、今度は血の入り込んだ爪が目に入り、それが勇者のものも混じっていることを思い出した。
そっと指を曲げ、手のひらの傷に赤い爪を軽く突き立てれば、微かな痛みが走る。
じわりと血の滲んだ手のひらをしばらく見つめ、名付いた感情に観念したように瞼を閉じながら、そこへ爪と傷ごと口付けた。









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色んな意味でちょっとやりすぎた 病んではいませんよ

▽ 手のひらを舐めるくだり…あるサイトさまの小説と被ってることに書いてから気付いたのですが これマズイだろ、とのことなら下げるか改変かするのでご一報下さると嬉しいで…す…orz


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