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雨降りのウォルスコその2 なんか今回仄暗い…なぜだ 明るい話が書きたいのにー









「これだと、みんなここまで戻ってこれないだろうな」

スコールの言う“これ”とは、先程から降り続いている雨のこと。コテージの窓から見る外は、器に入れた水をひっくり返したような大雨だった。
探索から戻ってみれば他の組は居らず、留守番組のバッツとティーダの姿もなかった。二人に何かあったのかと一瞬浮かんだ危惧は、『食い物足りなかったからとってくる!』という机の上の書き置きによって払拭され、まったく、と安堵しながらも怒ってみせたスコールを宥めている内に雨が降り出し、そしてその雨は、すぐに雨足を強めたのだ。
さほど遠くまで行っていないはずの二人は未だ戻ってくる気配を見せないが、どこかで雨宿りしているのだと考えるのが自然で、最も望ましい。どちらにせよ、雨が弱まらないことには下手に探しに行くこともできないだろう。

「雨、まだ止みそうにないな。…あいつらはどこにいるんだか」

そう溜め息を吐いたスコールが、雨の確認に開けていた窓を閉じれば、雨粒が地を叩く音が一気に遠くなる。
苛立たしげに眉根を寄せる様には焦りも見て取れた。
雨は視界を覆い、感覚を鈍らせる。そんな中で、もしも戦闘になれば苦戦は必至となるだろう。確かではない仲間の危機のために、自らを危険に晒しては本末転倒になる。それはスコールもよく分かっているためか、「探しに行こう」と口にすることはなかった。ただ、だからこそ、不安が拭えないのだろう。
窓を閉じても未だ外を眺めているスコールの後ろに立ち、同じように覗き込んで見た雨足は、先程確認した時と変わらない、むしろ更に強まったように思える。

「みんなはテント持ってるからいいけど、あいつらは大したもの持ってってないだろ」
「…ずいぶんと心配そうだな」

饒舌ではない彼がやけに二人のことを口にするのが珍しくて、考える前に言葉が口をついて出ていた。当然こちらにそのつもりはなかったのだが、揶揄しているようにも聞こえてしまったのか、スコールは驚いたように振り返ってから、更に険しく眉を顰めて睨み上げてきた。

「調子者のあいつらだから、だ。そういうあんたは、ずいぶん平気そうだな」
「そのようなことはない。ただ、彼らならば無事であると思っている」

そう言い切れば、スコールの眸が一度惑うように揺れて、再び窓へと向いてしまった。さらに俯いてしまったことで、窓に映るはずの表情が見えなくなってしまう。

「…怒らせてしまったのなら、謝ろう」
「いや…謝るのは俺の方だ。いつも一番心配してるのは、あんたなのにな」

悪かった、と呟いた、その時に垣間見えた顔が、ひどく苦しそうに見えて。背後から細い肩をつかまえて抱き寄せると、一度身体を強張らせたものの逃げ出そうとはしなかった。
きっとこれは、どちらが悪いということでもなければ、あるいはどちらも“悪かった”のだろう。それよりも、スコールが表情にひたすらに影を落とすのが一体何に因るものなのか、それが分からないことが不安だった。

「他の者も戻って来られない中で、君が二人を特に心配しているのが気になったのだ。彼らに少々羽目を外すきらいがあるという、それだけではないだろう?」

バッツとティーダに、スコールの言うような調子者らしさがあるのは同意するが、それは戦士としての信頼とは別であることは彼自身も分かっているだろう。もし、この時の二人が、バッツとティーダではなく他の誰かであっても、彼は同じように心配するのだろうか。もしも自分が二人の立場であったなら、今より安心してくれるのか、あるいは余計に心配してくれるのか。
どちらかであれば少し嬉しくて、同時に少し残念に思ってしまうかもしれないな。訊きたくなる気持ちを己の感情の予測に結論付けることで抑え込み、窓の鏡の中でスコールが逡巡を終えるのを待つ。

「…あいつらは、ここにいるはずだったから。帰って来れるはずなのに、この雨のせいで帰って来れない」

やがてぽつりと零れた言葉は、なにか痛いものに耐えながら無理矢理に発しているようにも聞こえた。聞いてはいけないことを聞いてしまったような気がして、答えを求めたことに後悔の念が湧いたのが、表情に出たらしい。こちらを見たスコールの、窓映しの表情が苦笑混じりになった。

「雨のせいだと思うと、すごく、嫌なんだ。こんな大雨だと余計に…嫌なことまで、思い出しそうだ」

思い出しそうと言いながら、既に思い出しているのだろう。グローブの無い手で窓に触れて、自嘲しながらも懐かしむような小さな苦笑に、嫌だと称しながらも拒絶してはいないのだと思った。
己を苛む記憶を受け止めようとするのが、どれほどの痛みを伴うのか、記憶を持たない自分には分からないのがもどかしい。分からない以上何を言うこともできなくて、言うべきでないとも思えて、結局できたのは腕に力を込めることだけだった。

「…人のこと言えないんだろうけど…なんかひどい顔してないか、あんた」
「そう、だろうか」

スコールが振り返りながら顔を上げたことで、窓に映るそれよりも間近で互いの表情を認める。苦しげな色は消えていないが、視線は真直ぐに向けられていた。

「やっぱり、へんな顔だ」
「…先程はひどいと言っていなかったか」
「どっちも同じだろ」

こら、と軽く叱れば、スコールは幼子のように一度首を引っ込めてみせてから、次には身体を反転させて抱きついてきた。背中に回った手の力が思った以上に強く、驚いて一瞬腕の力を緩めてしまったものの、すぐに込め直した。肩口に当たる吐息に安堵が滲んでいるが、手の力は縋るものにも似ていた。

「今は、いて欲しい。それで…それだけでいい」

それは、いつかはいなくなるからか、とは聞けない。分かりきっているから、互いに口にしない。だからその願いはひどく切実で、何よりお互い様でもあった。

「君が望むなら。私も、そうしたい」

スコールが頷いてから髪に顔を埋めてくるのを愛しくも切なくも思いながら、窓の外に目を遣れば未だ変わらぬ大雨が降り続いていた。窓に遮られている所為で雨音は遠く、ふたりしかいないコテージは静かなのに、外はそれに反した激しさで雨が地面を叩きつけているものだから、まるでここだけが別の世界であるかのような錯覚を覚えそうになる。
切り取られた世界で雨に守られていれば、望むだけ彼の傍にいられるのかもしれない。それでも、それは願えないし願ってはいけないから、想うだけで終わらせる。願えば囚われてしまいそうな予感が恐ろしいだけに、錯覚できるだけでも幸福だと思うべきだろう。

「――いつ止むんだろうな」
「どうだろうな。皆体を冷やしているだろうから、今の内に何か用意しておこうか」
「ああ、それもそうだな」

いつの間にか肩口から顔を上げて雨を眺めていたスコールの呟きに、返答ついでに提案すれば同意が返ってきた。そっと解放して、解放されてから、密かに窺った顔色が幾分か戻っていることに内心ほっとする。
備え付けられている簡易的な台所に向かうスコールを追いかける前に、もう一度だけと窓の外を見遣った。先程彼がそうしたように窓に触れてみたが、冷たさを得ただけですぐに止めて、豪雨からも視線を外した。










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