DFF中心の女性向け・腐注意ブログ
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地味にお久しぶりです 就活にひぃこら言いつつシアトリズムが楽しみすぎる自分です
思いつきのほのぼののようなばかっぷるのようなウォルスコです
思いつきのほのぼののようなばかっぷるのようなウォルスコです
親指と人差し指の先を1センチほど離して作った、一部欠けた指の輪を口で挟む。やり方を教えてくれた、楽しそうな彼の仕草を思い出しながら、息を吹き込んだ。
ひゅうっ
息が指先の間を吹き抜けるも、耳に入ってきたのは虚しい音だけ。予定では、高い笛の音がするはずだったのに。
ふとした折に、スコールはティーダから指笛を教わる機会があった。ティーダの見事な指笛は障害物の少ない聖域であったこともあって遠く響き、仲間たちを呼び寄せて、バッツとジタンを加えた指笛の三重奏を披露してくれたのだ。スコールはというと、これがなかなか上手くいかず、しかし負けず嫌いの性質のせいか諦めきれずに、こうしてこっそりとひとりで練習を繰り返していた。
ひゅう、ひゅう、と聞き飽きたすきま風の音がする。何をやっているんだろうな、とぼんやり思いながらも、練習を止める気は起きなかった。
指笛なんてできなくても問題ない。指笛が、自分と相手の優劣を表すものであるはずがない。負けず嫌いを発揮する必要もない。冷静な部分は、そうスコールを詰ってくる。指笛を練習するくらいなら、その時間を鍛錬に充てるべきだ――あの勇者ならそう言うに違いない。そこまで考えられるならさっさと止めてしまえばいいものを、彼の目を盗むように練習しているのはなぜだろう。
鳴らない指笛が、こんなにももどかしい。聞こえない指笛が、こんなにも虚しい。
「オレ、待ってるんだ。指笛が聞こえないかって、呼んでくれないかって。こうやって吹いてたら、『あっち』にも聞こえるんじゃないか、聞こえたらいいなって」
それは、ティーダが指笛を鳴らす理由だった。“あっち”が誰のことを指しているのか、ティーダにも分からないようだが、指笛を吹いてくれる誰かがいることは、疑っていないようだった。
鳴らない指笛にやきもきしていたスコールにそう語ったティーダの顔には、敵が戯れに揶揄する夢幻らしい儚さはなく、確りとした眼差しで遠くを見つめていた。
「ずっとずっと遠くまで飛ばすんスよ。オレはここにいるぞーって、どんなに遠くにいてもさ」
「……遠くまで」
からりとした笑顔を向けられて、代わりのようにスコールは先程のティーダと同じように遠くを見つめた。
感覚で話すことの多いティーダの言葉は、どちらかといえばリアリストであるスコールには理解しきれない部分がある。それでも無下にするどころか時には聞き入れてしまうのは、ティーダの人柄のせいか、もしくは自分にも意外なロマンティックさがあるせいなのか、スコールにはよく分からない。
結局、ただの理想だ。指笛が相手に届くことも、自分に届くことも。そうと分かっているのに、ティーダがあまりにも愚直に信じるものだから、スコールだって理想を信じてみたくもなる。
いつか指笛が鳴って、遠くまで飛んで、そして。
場所を聖域から森林に移しても、先日のティーダとの会話を思い出しながら、遠くを見つめて息を吹き込む。ぴゅ、とごくわずかの細い音がしたが、喜ぶ間もなく木々を抜ける風があっさり攫ってしまって、スコールは思わず風の吹く先を恨めし気に睨んだ。
つられただけだ、と思う。指笛は大して鳴らずじまいで、これでは誰を呼ぶこともできやしない。そもそも鳴ったところで、世界を超えても届くものなのだろうか。元の世界とは言わないから、せめてどこかの世界の欠片で別れて探索している勇者にくらいは。
そう考えて、いやと首を振った。
「あいつ、兜のせいで余計聞こえないだろ」
「何がだ?」
「指笛が……?」
背後からの声に振り向けば、発生源が思った以上に近いことにまず驚いた。その上、それが勇者であることに、スコールはさらに目を見開いた。背後を取られただけというには少々過剰に思える驚きっぷりに、勇者は一度首を傾げてからスコールの隣に腰を下ろした。見れば、鎧こそ纏っているが兜は外している。ベースに帰ってきたもののスコールの姿が見えず、居場所を誰かに聞いてきたといったところだろう。
妙な気恥ずかしさに、スコールは顔を背けてしまう。なにせすぐ隣にいるのは、先程まで脳裏に浮かべていたその人なのだ。
そんなスコールの様子に気を悪くした素振りは見せず、ただじっと薄氷を向けてくる勇者が、ふと思い立ったように口を開いた。
「スコール、ただいま」
「あ、おかえり……あ」
あまりに普通に言われたものだから、向き直して普通に返してしまった。一瞬ぽかんとしてから、じわじわと妙な熱がこみ上げてくる。向けた先の勇者が、やっとこちらを見たとばかりに嬉しそうに目を細めたものだから、恥ずかしいような悔しいような、つられて嬉しくなってしまったようなで、スコールの頬はもう少しだけ熱くなった。
してやられたとばかりに睨み上げても、勇者は唇で弧を描いてみせた上に、熱い頬を撫でられて、あっさり絆されてしまう。顔を逸らして膝を抱えることで振り払っても、くすりと笑う声しか聞こえなかった。器用なのか不器用なのか分からないこの男が、先程指笛を攫った風より憎らしい。今だけは頬の熱を冷ましてくれる風の方が優しい、と忙しない心臓を抱えて、心の中で愚痴を零した。
拗ねた子供の顔で眉根を寄せつつも、大人しく髪を撫でられているスコールの耳に、そういえばと呟くような勇者の言葉が入ってきた。
「指笛だったか? ずいぶん上達したのだな。おかげで君の居場所がすぐ分かった」
え、とスコールは思わずといった風に声を上げた。いつまで指笛の練習にかまけているのか、あるいはこんなところで指笛など鳴らしたら敵を呼び寄せる、と怒るつもりはないのか。いや、そもそも鳴っていないはずの指笛が聞こえるはずはない。
何より、スコールは勇者が仲間に聞いてここまでやってきたと思っていた。自分でも理不尽だと思うが、それを少しだけ残念に思ったくらいだ。
「他の奴に聞いたんじゃないのか?」
「いや、皆も分からないと言っていた。今思えば不思議だな、あれほど指笛が聞こえていれば分かるだろうに」
そう告げる勇者は本当に不思議そうで、スコールまで首を傾げる羽目になった。そういえば、隠れて練習するために誰にも居場所を言わなかった気がする。敵の気配もなく、離れすぎるつもりもなかったからだ。
実際、場所の特定はできなくても気配くらいは分かる距離で、指笛が鳴ったならベースに聞こえないはずもない。しかし鳴った覚えはなく、なのに勇者には聞こえたという。
「はっきり聞こえたのか? ここから?」
「ああ、間違いない」
そう頷く勇者にからかいの色は見えない。ここで嘘を吐くメリットもなく、勇者が嘘を吐くはずもないのだから、やはり聞こえたのだろう。
「……俺はここにいるぞーって、思ったつもりは……」
ない、と言い切れるだろうか。練習を止められなかったのは、鳴らない音を、風を恨んだのは、届けばいいと思っていたからだ。隣でティーダの口調を借りた言葉に目を瞬かせている勇者に。そして音のない指笛を辿って、彼は自分を見つけてくれた。
理屈では分からない、けれど確かに届いたのだ。そう納得すると、恥ずかしさとは違う感情で、スコールは頬を染めずにはいられなかった。
――どうしよう、嬉しい。
「ティーダに感謝しなくちゃな」
音のない音を聞いてくれたあんたにも、とは言わずに。理想(ロマン)も、たまには悪くない。
湧きあがる喜びに任せて、未だ不思議そうな顔をしている勇者に、スコールは微笑いながら抱きついた。
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久しぶりにあんまり迷わずに書けた気がします
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