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DFF中心の女性向け・腐注意ブログ
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元々は会話文だったのですが、長くなったのでもう普通にSSSにしようと思ったらSSになってた
ウォルさんにキザな言葉を言わせよう!というだけのしょーもないネタだったのにどうしてこうなった

最近のウォルさんは賑やか組に遊ばれてる感があるよ…スコールはいつものことです









「今日は君が当番なのか」

エプロンと包丁を手に持ちテントを出ようとしていたところで、掛けられた声に振り向けば、ちょうど休息用の装備に着替え終えた勇者がこちらを向いていた。言われた通り、今日はクラウドと組んでの料理当番であるため頷いて返してから、ふと思い至ることがあって口を開いた。
ちなみにこのエプロンは余った装備からフリオニールが作り直したもので、包丁は変わったイミテーションが落としたもの。攻撃力が高い以外は何の変哲もない包丁だったので、本来の使い方をさせてもらっているのである。

「何か食べたいものでもあるか?」

本日の相棒であるクラウドは、料理は作れるもののその種類が非常に少なく、更に言えば料理に関する知識も限定されたものだった。そのため料理の献立をひとりで考えなくてはならず、そして意外と思い付かないものだったりするのだ。
そこで勇者に希望を聞いてみたわけだが、元の世界の文明からして(おそらく)まったく違う上に、普段から食事のリクエストなど滅多にしてこない勇者のこと。ふむ、と考え込む勇者には少々申し訳ないが、ちゃんと希望が貰えるとはあまり期待していなかった。
だから、勝手に献立に思考を飛ばしていたおかげで、返ってきた言葉に一瞬反応が遅れた。

「スコール」

唐突の呼びかけに、宙を彷徨わせていた視線を勇者に戻せば、いつもの真面目ったらしい顔がある。気になったのは、声が呼びかけとは少し違った声音に感じられたこと。
そんな引っかかるものを深く考えはしないまま、何かと視線に疑問を込めるも、呼びかけに続く言葉を勇者が発する様子はない。代わりに出てきたのは、再びの呼びかけらしいもの。

「だから、スコール」
「…俺がどうした」

そっちを見ているじゃないか、ちゃんと反応しているじゃないか。
再三の呼び掛けに少々の苛立ちと僅かな違和感を感じつつ、怪訝さを表情に浮かべて首を傾げるも、今度は勇者の方が不思議そうな顔をするという始末。しばらく無言のまま、らちが明かないようならもう話を切り上げてしまおう、そんなことを考えたところで、勇者は何かに納得したように、ああ、と声を出した。そして告げられたのは。

「君が食べたい」

ぱちり、と瞬いて。
それが問いの答えだと気付いて。
つまり、リクエストが自分だと納得して。
その意味するところを考えて。
は?と我ながら呆気な声が漏れて。
エプロンと包丁がずるりと手から滑り落ちた。
包丁が突き刺さったテント布の悲鳴が聞こえて、我に返り咄嗟に下を向けば、自分の足先から数センチ先だけ離れた場所に包丁が突き刺さっているのが見えて、思わず飛び退いた。

「こら、気を付けなさい」

眉を潜めた勇者がエプロンと包丁を拾うのを、呆然とした心地で眺める。叱られたことに関してはほとんど耳に入っておらず、それに頷きを返したのはほとんど無意識のようなものだった。
それよりも、もっと前の勇者の一言がぐるぐる頭を飛び交っていて。

「あ、あんたが変なこと言うからだろ!」
「変なこと?」
「だ、だって…まだ夜でもない、のに」

今はまだ夜には早く、たとえその言葉が食事前に言うものとするとしても、冗談としては性質が悪い部類に入るだろう。おまけに冗談とは遠いこの勇者に言われては、驚愕が付加されて余計に心臓に悪い。それも、本人はいつもの真面目な顔で言うものだから、本気なのか冗談なのかが区別付きにくく、おかげでこちらは下らないと一蹴することも出来ず、認めたくもない僅かな期待まで得てしまうのだ。
これまた不思議そうに首を傾げる勇者を、腹立たしさと羞恥を自分に向けたものまでひっくるめて込めて睨み付ける。ここがテントの中で、人目が無かったのが唯一の救いか。
ああ、もう、触るんじゃない、余計に意識してしまうだろうが。髪を撫でられようが、絆されてなるものか。

「…そうか、夜に言うことなのか」

必死で睨め上げている内のこちらの心境を知ってか知らずか、やがてまた納得したように勇者は頷いた。その様子に、呼びかけと勘違いしていた時のものとは別の違和感を得て、ぱちりと瞬いた。
冗談を好まないどころか知りすらしないような男が言うには、それは少々過ぎていて。そしてそれを口にした割には、あどけないとも言えるような納得。
まさか、とほぼ確信に近い懸念が浮かぶ。

「……なぁ、それ、意味分かって言ってるのか?」
「いや」

予想通りの答えに、脱力して座りこみそうになるのを気力だけで抑える。ただ項垂れてしまうのは止められず、手のひらで熱いままの顔を覆った。
勇者の方は変わらず真顔で、いっそ笑いたくもなってくる。

「…じゃあ何で言ったんだよ」
「驚く君が見られるというから」

ああ、それはもう盛大に驚かせられましたよ。
そう内心で吐き捨てれば、次いで浮かぶのは元凶だろう顔ぶれ。

「……バッツか、ジタンあたりだな?」
「そうだな」

予想を続ければ、生真面目に裏付けてくれる勇者の答え。あの賑やかな二人が、悪意のあるんだかないんだか判別の付きにくい笑顔を浮かべながら、傍迷惑な知識を勇者に吹き込む図が目に浮かぶ。
自分が消極的なのは自覚している通りで、勇者も堅物ときているものだから、彼らにはそれがまどろっこしいのか、時折こういった―――色気づいた気を遣ってくる。余計なお世話だと思うくせに、それをほんの少しだけ後押しに利用させてもらっているだけに、自己嫌悪まで覚えてしまう。
黙り込んでしまったのをどう解釈したのか、エプロンに包んだ包丁をそのまま傍らに置いた勇者が、真っ直ぐに視線を向けてくるまま言葉を続けた。

「意味は君が教えてくれると言っていた。『食べる』といっても言葉通りの意味ではないことは分かるのだが、夜に言うべきものというと予想がつかない。『君を食べる』とは、どういった使い方をするのだ?」

頼むから、連呼しないで欲しい。
そう懇願しようにも、実行すれば理由を聞かれてしまうだろうから、意味を教えるのと変わらない。投げ出して逃げることは出来るが、そうすれば彼は他の仲間に聞いてしまうだろう。それがセシルやクラウドなら上手く悟って適当に言ってくれるだろうが、もしもオニオンやティナだったら目も当てられない。意味を分かっているとは思いたくない二人にまで意味を聞かれてしまっては、ある意味この勇者よりも厄介であり、ならば低い可能性でも排除しておきたい。
というか、何より恥ずかしすぎる。それだけは本当に勘弁願いたい。
そして尋ね先が吹きこんだ張本人たちだったなら、からかわれることが容易に想像出来るので。
どの道自分がどうにかするしかないと分かってしまうと、自然と顔を覆ったままの手のひらに溜め息をぶつけてしまう。

「スコール?」

どこまでも不思議そうな声で今度こそ呼びかけられて、吹っ切れたように顔を上げた。もう自棄だと自らを無理矢理奮い立たせ、こちらの羞恥もまったく理解出来ていないような勇者の胸倉を力任せに掴み寄せると、髪から覗いた耳元で八つ当たり気味に言い放つ。

「だからっ―――!」

言い終えてからの一瞬流れた沈黙が、痛い。

「す…すまない、君を困らせてしまったな」
「まったくだ、この、バカっ…」

押しのけるように放せば、目許を赤らめた勇者の謝罪が耳に入ってきた。驚きつつ慌てたような、常を考えれば珍しいその様子にほんの僅かだけ溜飲が下がる。
とはいえ、散々な思いをさせられたことをすっかり忘れられるはずもない。手に包丁を持ったままだったなら思わず振り回してしまったかもしれない、それくらい恥ずかしかったのだ。今だって口にしたことで、ブリザドやフラッドでも冷めないくらいに顔が熱くなっているというのに。
何もかもが憎らしくなってきて思い切り睨みつけていれば、再び謝罪が降ってきた。名残で赤らめたままの顔に、困ったような苦笑を載せられては、もう八つ当たりの文句を止めることしか出来ないじゃないか。そんなまた別の文句を連ねようにも、元凶は別にあって勇者もある意味被害者なのだから、このまま怒り続けることも出来なくて。
結局、これ以上の恨み節は特大の溜め息で吐き出すついでに、代わりの釘として刺しておくことにした。

「…あんたは正直すぎるんだ。少しは疑ってくれ」
「善処しよう」

記憶もなく、おそらく生きてきた世界の文明も大きく異なる以上無茶な要望だろうに、言葉通り善処しようとするだろう勇者を思うと安心したような申し訳ないような、複雑な気持ちになる。
兎にも角にも押しつけられた任務は終わったのだから、もう勘弁して欲しい。置かれたままのエプロンと包丁を取ろうとした時もひたすら逃げたい一心だったというのに、後ろから腕が伸びてきた腕に緩く抱き込まれてしまって、内心悲鳴を上げる羽目になった。

「ところで、スコール」
「な、んだよ…!?」

今度は何だ、一体何のつもりだ、何を言うつもりなんだ、さっきまでの困った顔はどこ行った、何でもう平気なんだ、いちいち切り替えが早すぎるんだあんたは!
そう喚き散らすも、心の声では当然相手に届くはずもなく。大きな手に髪をかき上げられて晒された耳が、はじめに触れたのは夜へ向かう冷え始めた空気で、次に触れたのは勇者の吐息だった。

「もう、言っては駄目か?」

どこか楽しげな色を滲ませた声に心臓が跳ねて、一瞬呼吸が止まる。なぜならその言葉の意味するところは、そして意味を理解した上でのそれは。
黙り込んだまま混乱しかけた脳内では、時間とか場所とか気分とかそういったものを考えろだの、出来れば言葉を変えて欲しいだのとまたもや文句を連ねていたものの、それらが勇者の要望に対して根本的に肯定していることに気付いてしまっては、何も言えなくて。
どう返せばいいのか分からなくなった結果は、向こうに丸投げすることだった。

「…自分で、考えろ!」



ちなみにその後、包丁を持ったスコールに追いかけ回された挙句、公開処刑さながら地面に埋もれる勢いでヒールクラッシュされるバッツとジタンがいたらしい。特大のタンコブを頭にプレゼントされ倒れる彼らの傍の地面に、墓標のように包丁が突き刺さっていたのは妙に恐ろしかったと、目撃した仲間たちは語った。
スコール曰く、穴に入りたいという気持ちを味わわせたかったのだとか。なお、それをやりすぎだと咎める命知らずはいなかった。









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エプロンは愛エプ装備の鉄のエプロンでもよかったかもですね
なんだか遊ばれてる感のあるばかっぷるでした


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