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DFF中心の女性向け・腐注意ブログ
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天使なスコールのお話をやったので悪魔なウォルさんもといライトさんでやってみたお話 発想が貧困で我ながら残念 しかし非常にノリノリで書いたせいか無駄に長いです
・悪魔と人間パロ
・スコールが非常にシスコン
・CPぽさはあるけど成立はしてません

悪魔ライトさん思った以上に楽しかったのでこれも何らかの形でまた書けたらいいな
(天使スコールは恋愛感情を持てない設定にした所為か書き辛い自業自得……)





 光の差し込まない廃墟の、さらに暗がりにあった広い一画。地下であるために窓の無いその部屋は、今はひとりの少年が置いた円を描く蝋燭によって赤く照らされていた。闇に溶け込む黒装束のフードから少しだけ明るい色の髪と蒼い眸を覗かせて、少年は面を上げると、蝋燭の灯りで映し出される床を眺め遣った。床の文様はところどころ擦り切れているものの、もともとあったものではなく描かれたばかりだと知れる。
 ぱた、と雫が床に落ちる。文様と同じ色をしたそれは、少年の左の袖から滴っていた。雫が袖を濡らすのにも構わず、蝋燭とは別にランプを掲げて、本へ視線を移す。黄ばんだ頁を開き、しばらく確認するように読んでいたと思えば、乾いた音を立てて閉じられる。ふ、と漏らした吐息は、わずかに緊張を滲ませていた。やがて、ぽつりぽつりと少年の唇から呟くような声が滑り落ちる。普段口にする言語とは違う、禁忌とされる魔術語は、偶然本を見つけてから何度も読み返して暗記したものだった。
 長い呪文を唱えながら、少年の脳裏に浮かぶのはただ一人の姉。母親を亡くし、父親の行方は知れず、幼い少年は姉と小さな孤児院に残された。物心ついたばかりの少年のすべてはその小さな世界であり、大部分は姉で占められていた。ママ先生と呼んでいた母代りの女性と、面倒見の良い姉と臆病な自分、貧しくも平穏だった生活が踏みにじられた瞬間は、少年は今でも鮮明に思い出せる。唐突の闖入者はママ先生を殺し、姉を奪い、少年を傷付けた。偶然ママ先生の夫が孤児院を訪れたことで少年は生き延びられたものの、姉の行方も闖入者の正体も分かるはずがなく、少年は一晩で驚くほど簡単に絶望に突き落とされた。
 捜して、恨んで、そうして今日まで生き続けてきたのだ。闇に浸った心で、胡乱に彷徨いながら調べてみて分かったのは、姉は何か特殊な能力を有していて、それを闖入者に狙われたらしいということ。そして、闖入者の正体は非常に大きな組織で、その上民間に広く浸透した“表の顔”まで持つ、とても少年ひとりの手に負えるものではなかったということだった。
 少年にとって自身の命など惜しくもないが、無駄に捨てるつもりはもっとない。孤児に過ぎない自分が、ひとりぼっちで敵対したところで無謀だと分かっている。周りに味方が望めないのなら、作ればいい。偶然手に入れた禁書の、その内容にほくそ笑んだのは、いつのことだったか。
「まだ、子供か」
「え?」
 不意に聞こえてきた声に、少年は回想を止めて弾かれたように顔を上げた。文様と蝋燭に囲まれた中心に、少年と同じような恰好をした男が立っていた。
「私を喚ぶことがどういうことか、分かっているのか」
 いつ呪文を唱え終えていたのか、それもはっきりしないほど回想に浸っていたが、気配もなく立つ男が人間でないことはすぐに分かる。淀みなく真っ直ぐ向けられる声に気圧されそうになりながらも、震えそうになる血の乾いた拳を握り、少年は必至に気丈を装った。
「喚ぶ、ということは、あんたが?」
「人間は<悪魔>と呼ぶそうだな。私たちの力を<魔力>とも」
 文字にできず、人間には発音の出来ない名前だと文献で目にしたことがある。悪魔と名付けたのは人間であり、もう少し正確に言うなら“魔を持つもの”だろうとも。
 男がく、と背を曲げると、どうして隠れていたのか、よく知る形状の羽が背伸びをするように広がった。種族名がなんだろうと、彼が今求める者には違いない。そう判断した少年が本題に入ろうと口を開きかけて、男がフードを取り去ったことで言葉は喉で留まっていた。男の肌は彫像のように白く、ところどころ跳ねた長髪は蝋燭に照らされてなお青みを帯びた白銀。そして双眸は、淀んだ血色どころか澄んだ薄青で、あまりに予想と違う姿が少年から言葉を奪ったのだ。
 口も半開きのまま瞠目して固まった少年に、男は不思議そうに瞬いた。
「……あんた、本当に悪魔か?」
「どうしてそう思う?」
「いや……別に」
 天使の方が似合うんじゃないか、とちらりと考えたが、口に出すのは止めておいた。天使だの悪魔だのの容姿など、結局勝手なイメージに過ぎなかったというだけのことだ。下手に機嫌を損ねて、契約もできないまま逃げられるかあるいは命を奪われても困る。ただ、下手な人間よりもよほど話が通じそうなのは幸いか。
 少年は睨むように男を見据えると、喉に絡んだままだった本題を口にした。
「あんたを喚んだのは、捜すため、救うため、殺すためだ。俺ひとりで、それをするだけの力が欲しい」
「契約か。しかしそれは、」
「命を削るんだろ? 知ってるし、それでも構わない。おね……姉さんを助けられるなら」
「――やはり、分かっていないな」
 なに、と少年が眉根を寄せた途端、男の姿は少年の眼前に移っていた。男は思った以上に背が高く、怜悧な無表情で見下ろされると威圧感すら覚える。男の手が少年のフードに伸び、落とされて初めて少年の顔が露わになると、男はわずかに顔を顰めた。
「すべてはこちらが優位だ。喚び出された時点では、私たちには何の制約もない。つまり、喚ばれた瞬間に殺すこともできる。たとえ契約を交わしたとて、完全なものと偽って魂だけを食らって帰るものもいる。いや、それがほとんどだな。……もちろん私も例外ではない」
 長い前髪から覗く少年の眼に、困惑の色が浮かぶ。それを認めた男は表情を無くすと、追い討ちのように言葉を続けた。
「君は闇を溜め込んでいるようで、ずいぶん無垢だな。私たちにとってこれほど体のいい餌はいないだろう」
「その割に、あんたはこの場で喰うつもりは無いんだな。それならいい」
 脅しにも似た言葉を口にしたものの、少年は怯えるどころか確信したように返すものだから、今度は男が面食らう番だった。人形と紛うほど整った顔は、今までに男を喚び出したどの人間よりも幼いのに、最も毅然としていた。今までの人間は、男が真実の一端を教えてやった途端に事の重大さに気付き、命を惜しんで逃げ出したというのに。
「……君は、変わった子だな」
「普通じゃ困るんだ。それで、俺が体のいい餌だというなら、本当の契約はしてくれるんだろ?」
「望むのは、情報と力か。……いいだろう。ただし、完全なものはもう少し後だ」
 もう少し後? つまり、今すぐには不完全なものしか施されないということなのか――それに文句付けようとした少年の身体が、不意に男の方へ引き寄せられる。闇の中でも浮かび上がるようだった男の顔がより間近に見えたと思うと、冷たい唇が触れて少年の言葉は完全に飲み込まれた。
「ふ、う……んぐっ!?」
 男の細められた薄青の眸がどこか妖しい光を湛えているのに一瞬見惚れていると、開いたままだった咥内に熱い舌が挿し込まれる。同時に何かを流し込まれ、直接喉に入り込んだことで思わずえずいた。唾液とも血とも異なるそれが喉を通るにつれ、脱力感と熱が少年を襲う。男に支えられていることで倒れはしなかったものの、縋らないと立っていられないほどの感覚だった。
 いつまで続くのだろう、とぼんやり思い始めたころ、ばさりとまた唐突に羽の羽ばたく音が静寂を切り、一気に少年の意識を引き戻した。唇が離れ、息を切らしながらようやく辺りを見回してみれば、少年は男の羽に護られるように覆われていた。
「こうして一人が喚ばれると、戯れについて来る者がいる。彼らのように」
 きぃきぃと理解出来ない耳障りな音が、羽を通して聞こえてくる。不完全な契約を結ばされた挙句捨てられた人間や、命を惜しんで逃げ出した人間が例外なく殺されるのは、喚ばれた者の他にもついて来た低級の悪魔に喰われるからだと、男は不愉快そうな声音で告げた。文献に残るのは召喚の方法ばかりで、その後のことがまるで書かれていないのはその為かと、少年は熱に翻弄されかけた頭で理解した。
「さて、少し魔力を与えたがしばらくは動けないだろう。傷付いてみるのもいいだろうが、あまり気に入らないな。……追い払うか」
「おい、怪我してみてもいいってどういう……っ?」
 男が支えていた腕を離すと、少年はあっけなく床に座り込んでしまった。ぺたんと尻もちをついた状態で見上げれば、いつの間にか黒い長剣を手にしていた男は飛びかかってきた悪魔の一人と対していた。
 低級の悪魔に見境がないのか、そもそも悪魔に同族意識がないのかは分からないが、向かってくる悪魔には容赦がないように見える。しかし男の方はといえば魔力を使う様子もなく、向けられる鋭い爪も火球や氷塊も剣一本で危なげなくすべていなしている。
「いや、てことは、俺も戦えるんだろ!? だったら俺も……」
 少年が叫ぶように言い募れば、片手で軽く悪魔を弾き返した男は振り返って見下ろしてくる。わずかにしか動かなかった表情が、初めて微笑を浮かべたのが見えて、少年は思わず呼吸を止めた。
「いい子だから、待っていなさい」
 途端に左手から悪魔が襲い掛かってくる、それを男は一瞥すらせずこれまたいつの間にか手にした黒い盾で防いだ、否、殴りつけた。ごん、と間抜けにすら思える音を立てて、頭を強打した悪魔はそのまま床へ崩れ落ちる。すぐに男の右手から向かってきた悪魔は、剣で貫かれた。
 悪魔なのに、剣も達者なのか。勝手に抱いていたイメージを次々と崩されて、呆然としながらも男に見入ってしまう。そのせいか、すぐ傍に悪魔が滑り込んできたのに、少年はすぐに気付けなかった。
「スコール!」
「え? っ!?」
 名前を呼ばれたと同時に頬に熱を得たと思うと、少年の眼前を輝く剣が横切った。ぐぎゃ、と醜い声を上げて光の剣に貫かれた悪魔は、瞬く間に灰燼に帰した。これで最後だったのか、一挙に訪れた静寂に、我に返った少年は目の前で男が跪いたのにわずかに驚いて首を逸らした。
「すまない、怪我をさせるつもりはなかったのだが」
「い、いや……というか、俺の名前……」
「先程君の体液を取り込んだからな。少しだが君の情報を貰った」
 “先程”と“体液”が指すものに気付いて、少年の頬がかっと熱くなる。姉と過ごした孤児院がすべてで、その喪失への復讐に囚われていた少年がこれまでに恋愛をすることはなかったが、世俗を知らずにいられるはずもなかった。それどころか、見目が相当良いらしい少年が下卑た視線に晒されることは少なくなく、治安の悪い場所においては暴行を受けかけたことも何度もあった。その度にもれなく返り討ちにしてきたのだが。
 それなのに、なぜかこの男に対しては素直に羞恥してしまっているのに気付いて、少年は戸惑っていた。頬の熱など、姉やママ先生に親愛のキスを貰った時か、体調を崩した時くらいにしか感じたことがなかったというのに。相手が人外だからなのか、などとよく分からない理由で納得するしかないだろうか。
 赤い顔で黙りこくってしまった少年に男は一度首を傾げてから、ふと少年の頬へ手を伸ばした。少年は思わず小さく肩を跳ねさせたものの、ぴり、と痛みが走ったのに、触れたのが傷だと気付いた。血が伸びる様子がないことから、血が流れない程度には傷が塞がっているようだが、早すぎないだろうか。文様を描くために傷付けた左腕は、血が流れないどころか痛みすらない。
「治癒力が高まっている。どうやら問題なく定着したようだな」
「……傷が治りやすくなったってことか?」
「魔力がある限りだが。それに、普通の人間よりは頑丈になっているはずだ」
「そうなのか……」
 こう座っているだけではあまり実感が湧かないが。人では持ちえない力を得られるのだと漠然と考えていたが、魔力で何が変わったのか、まだ色々聞いてみる必要がありそうだ。知らず楽観していたのか、あるいは自棄になっていたのか、思い返せばずいぶんと無計画に悪魔を喚び出してしまったのだと、今更思う。
 苦い顔をする少年に男はもう一度首を傾げてから手を離すと、さて、と立ち上がった。なぎ倒された蝋燭と文様へ向かう男を追うように、脚に力を込めれば脱力感が嘘のようにあっさり立ち上がることができた。男が黒い剣で薙ぐと、残っていた蝋燭の炎が一気に消える。灯りが少年の持ってきたランプのみになり、部屋の重く湿った暗闇が押し寄せた。
「床に描いたやつは、そのままで大丈夫なのか?」
 血の文様など、残しておいて良い代物ではないだろう。男にまるで頓着した様子がないのを訝しんだ少年が訊ねれば、男はもう消したと返してきた。戦いの最中か先程の蝋燭の火を薙いだ時か、一体いつ消したのだろうか。
 首を捻る少年をよそに、男はさっさと部屋の壊れて開いたままだったドアまで歩いていく。闇の中でも発光しているような髪のおかげで見失わずに済みそうだが、置いて行かれるのも宜しくないと、真っ直ぐ伸びた背を慌てて追いかけた。
「ここにもう用がないのなら外に出よう」
「あんたも?」
「不完全な契約で困るのは、君ではなかったか?」
「そうだけど……なんか、普通に言うから」
 確かにまだ帰ってもらっては困るのだが、彼自身が口にした脅しの内容からして、悪魔とはもっと自分本位に振る舞うものだと考えていた少年には、協力的にすら思える男の行動は不可解なものだった。少年を“体のいい餌”などと称しておきながら、低級悪魔からは守ってみせる。上手いこと信用させてから喰う魂胆だろうか、と疑ってみようにも、これまでの発言で嘘を吐いている様子はなかった。
 天使と言われた方がよほど納得できそうな容姿、脅し文句は伝えられていなかった警告、魔力を持ちながら剣を使い盾で殴る、悪魔のくせに光の剣を放つ、微笑は驚くほど柔らかい。
 少年が傷付けば、下位のはずの人間に謝った。
「変なやつだな、あんた」
 そう言ってから、そういえば唇は冷たかったけれど、抱き締められた時の腕の中は暖かかったな、と思い出して。少年は再び頬に朱を昇らせると、荷物を手に男の背を一気に追い抜いた。
「スコール?」
「そ、そういえば! あんたの名前は何なんだ?」
「名前? 人間に伝えられる名は持っていないが、不便なら君がつけるといい」
「……俺が?」
 赤い顔を見られないために先を進んだというのに、まるで予想だにしなかった言葉に少年は思わず振り返った。思いつかないからな、と肩をすくめた男は無表情のままで、特に考えもなくそう言ったのだと分かる。
 悪魔にとって、人間に呼ばれる名前など識別番号のようなものなのかもしれない。それなら男の適当な様子も合点がいく。しかし適当で良いとはいえ、そうすぐに思いつくものでもない……そこまで考えて、ふと男の言葉で引っかかる単語があるのに気付き、少年は眉を顰めた。
「『不便』って……契約ってまさか、ずっとくっついてなきゃいけないものなのか?」
「そういうわけではないが、ただ、しばらく君について行こうと思ってな。近しい者はいないのだろう? ならば、私一人増えたところで問題ないだろう」
 ずっと分かりやすく、同時にこれまた予想外の理由に、呆気にとられる。
「……なぜ?」
「興味、では理由にならないか?」
 それだけで人間について来ると言うのか? 人間よりもすべてが優位であるという悪魔が?
 優位だからこそそんな理由でも良いのだろうか、と少年が頭を悩ませているのを、原因である男は楽しげな光を双眸に泳がせながら眺め遣った。廃墟の出口へ向かう通路へ先に足を進めれば、少年はやはり慌てて追いかけてくる。
 廃墟を出るまでに名前を思いつくだろうか、どんな名前になるのだろうか。この変わった子供なら、思いもよらない名前を考えてくれそうだ。そんな予感に、男はそっと口端を上げた。

 命と引き換えにでも得ようとした力には、ずいぶんたくさんの“おまけ”がくっついてきた。その中のひとつで最も大きい“おまけ”の悪魔が、小さな世界が奪われてから、壁を作り何者も拒んできた少年の中に入り込み始めていることに、悪魔はおろか少年自身も気付いていなかった。









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ライトさんは上級悪魔 でも魔法より剣技(と盾技)の方が得意なのはいつも通りです
人間を喰いものにしてるのをあんまり良く思ってなかったライトさん
悪魔の割に良い人臭漂ってるけど悪魔自体『悪』ではないというだけ……という設定でした

闖入者の組織はバ○オでいうア○ブレラみたいなものを想定して頂ければ あとラグナは関わってないです

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