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DFF中心の女性向け・腐注意ブログ
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いつも殴り書きなのでたまには真面目にワードでぼちぼち
でもワード重いしgeditもなぜか妙に重い…そして秀丸がシェアウェアだったなんて(´・ω・`)

地味に長いです
時期的には589のクリスタル入手後~1のクリスタル入手前で








「宝石、か…」

数体のイミテーションを相手取り、最後に勇者を模したものを倒したときにライズした一個の宝石。青色と白色の光沢を持つそれは、踏みしめる硝子のような模造品の欠片とは似ても似つかない。宝石といえば高価なもので、そしてぼんやりとした元の世界の記憶によれば、こういうものは既に加工されたものしか見たことがない。物珍しさにつられ、掲げて覗きこんでみれば、向こうの景色が青みをはらんで透ける。まるで景色を凍らせたかのような色彩に、何かが重なった気がした。
おそらく、素材として利用出来るものだろう、と過ぎった感覚が分からないまま考える。きっと宝石としてはかなり良い部類だろうが、この世界でただ着飾るだけのものなど無意味であり、大した効果もなければ素材として別のものに造り変えるのが普通だった。何となく気になるだなんて、思うだけ無駄だ。ショップを営むモーグリに出会ったら鑑定してもらおうか、そう考えながら辺りを見渡して、何者の気配もないことを確認し、いつの間にか仲間ともはぐれていたことを知る。
クリスタルを手に入れたところで、無限の敵勢力に対しけしてこちらが優位に立つことはない。そんな情勢において、過度な個人行動が命取りであることは分かっている。そろそろ戻らねば、ここまで行動を共にしてきた二人に余計な心配をさせてしまうだろう。そう足を踏み出した、その時。

「スコール!」

戻るまでもなく見つかったらしい、しかし呼ぶ声があの二人のどちらのものとも違うような。それに足音は彼らにしては重く、それも一人分しか聞こえない。
怪訝に思いながら振り返って、ぎょっとする。駆けてきたのはあの二人のどちらでもなく、そしてここに居るはずがない彼、ウォーリア・オブ・ライトであったのだから。
通りで、足音が重いわけだ。そんな妙な納得をしつつ、いつの間にかそこまで来ていた勇者その人を見上げる。

「無事か」
「なんであんたが」
 
質問が被ったところで、一旦口を噤む。まず簡潔な質問に頷くことで答えてから、切ってしまった疑問をもう一度問い掛けた。
まだバッツとジタン以外の仲間たちとは合流していないはずなのに、なぜ彼がここにいるのだろうか。すると勇者は一瞬の間を開けてから、つい先ほど、と前置いた。

「バッツとジタンに会ったんだ。いなくなった君を探していると」
「… 戦っていたら偶々はぐれただけだ」

だから自分の意思で離れたわけじゃない、という下手すれば言い訳にもなりそうな事実を、勇者は信じてくれたらしい。以前に剣を交えて勝利した時には、ひとりで進もうとする自分をもう咎めようとはしなかった。しかし、今はひとりではなくあの二人と行動している。ここで再会する前にあの二人に会ったのなら、勇者もとうにそれを察しているだろうし、集団行動をしている時に同意なく離れたというなら当然咎められるだろう。それを分かっているからこそ、そうかと頷いてくれた勇者に安堵する。ただ、その安堵が果たして小言を言われずに済んだからであると納得するには、何かがもやもやしているような感覚が邪魔をする。それでも、その感覚の理由が見付からない内は無視をする他ないのだが。
はぐれた事実とは別に、無事だという言葉は信じ切れてもらえなかったのか、こちらの様子を確認していたかのような勇者の視線がちょうど手まで下がったところで、ふと止まった。

「それは?」

何のことかと首を傾げようとして、ずっと手に握っていたままであったものを思い出した。それを握りしめていた指を少し解いて、無意識に掲げながら口を開く。

「さっき拾った。多分、素材かなにかだろう」
「そうか。先程の二人がモーグリを抱えていたから、彼に聞いてみよう」
「抱えて…?」

それは捕まえた、と言った方が正しい気もするが、何となく言葉に出さないでおく。それにしても、戦闘に入る前にモーグリを見た覚えはないのだから、自分がはぐれた後に見付けたのだろうが、自分を探しているらしい彼らがなぜモーグリを捕まえているのだろうか。
そういえばモーグリは空を飛ぶ生き物であったが…少し恐ろしい考えが浮かんだが、敢えて気付かないふりをして首を傾げれば、勇者がふと手を伸ばして手の中の宝石を取り上げた。あ、と思ったときには、彼は宝石を透かして宙を見ていた。

「これは、綺麗なものだな」

馬鹿がつくほど正直だと思っている、そしてまさしくそうだろうその人の正直な感想に戸惑う。綺麗だなんて、至って普通の感情を彼が抱いたことが思った以上に意外で。いくら彼が光の戦士といえど、同じ人間であるには変わりないのに。確かに、彼のあまりにもまっすぐな性根はある意味人間離れしている気もするが。
人間なんてどこかが汚れているものだ、そう思っていたはずが、何故かこの勇者には見当たらないのだ。頑固だとか説教くさいだとかそういうものではなく、性善説とでもいうのだろうか、もっと本質的なところで。彼が自分と同じものであるとはとても思えない、そんな気がして仕方がない。
そう考え込みそうだった思考が、宝石を透かした視線がこちらに向いていたことに気付いた途端、停止した。
景色が少し青く見えるな、と呟くような言葉はどこか楽しげで。青みを増して見える彼の双眸が、宝石の向こうで細まっているのに、なぜか苦しくなった。

「…それが気になるなら、早く戻ってあいつらが捕まえたモーグリに聞けばいい」
「スコール?」

合った視線を外しながらどうにか押し出した言葉は、自分でも思った通り不自然なものだったらしい。不思議そうな勇者の声が追い掛けてくるのに構わず歩き出せば、重いのに決して遅くはない足音がついてくる。
すぐに隣に並んだ勇者はもう一度名前を呼んでくると、宝石を返そうと差し出してきた。別にそれを取られたことを不愉快に思ったわけではないのに、彼にはそう思われたのだろうか。もしくは、よく分からないからこそとりあえず返したほうがいいと思っただけなのか。たとえその宝石を取られたとて、それを自分だけのものにすることに意味も未練もなく、相手が仲間内の誰かなら問題はない。
―――だからそんな宝石を返してもらう必要もないはずなのに、なぜ自分は彼の手から宝石を取り戻しているのだろうか。
自分でもよく分からないまま返ってきた宝石を握りしめると、すまなかったという彼の謝罪が降ってきた。彼の中では宝石を取り上げたから不機嫌になった、ということで納得されてしまったのか。そう思われるのは不本意なはずなのに、更に言えば彼が謝罪する必要もないはずなのに、何も言えず俯いたままこれから歩く地面を眺めるばかりだった。


しばらく歩いていると、分かれ道に差し掛かった。どちらに進むべきなのか、そう迷いかけたところで、その逡巡に意味がないことに気付く。
このつぎはぎの世界は頻度こそ多くないものの、その姿を変えるのだ。ここまで来た道は、イミテーションを追いかけて通ったものと同じであり、そしてこの分かれ道は戦闘が始まった場所に近い。つまり、ここはおおよそあの二人とはぐれた場所であり、この辺りはまだ同じ世界であるようだから、バッツとジタンもさほど遠くにはいないはずなのだ。ならば、下手に動かずに見付かるのを待てばいい。幸いにして、気配には仲間の光か敵方の闇か模造品の無機質なものか、という分かりやすい差があるため、意図的に消しさえしなければ合流もさほど難しくないだろう。
特に、今は隣にもっとも分かりやすい光の持ち主がいるのだし……そう考えて、はっとする。今、あの二人を待つ間、この勇者が共にいることに期待してはいなかったか?
内心の動揺を悟られないよう、今まで以上に無表情を意識して、傍らの勇者を見上げる。

「俺はここであいつらを待つ」

だからあんたは先へ進んでくれ、そう言いたかったのに。そうか、と頷いた彼がすぐ近くの木へ凭れかかったことに戸惑う。

「…おい?」
「もし彼らがここを見付けられなければ、また君はひとりだろう?」
「それは…」

確かにそうだが、だからといって彼まで付き合う必要は、否、付き合っている場合ではないはずだ。彼がクリスタルを手に入れていないことは、先程再会した時にすぐ分かった。
敵勢力に衰えは見えず、むしろその力は徐々に増している。このどことも知らぬ世界を渡りつつ、法則性のあるイミテーションたちの動きにも慣れるにつれ、すなわちこちらが成長する度に、ただプログラムされただけにすぎないはずの模造品たちにも強化が施されているように思えるのだ。
今までは無条件に通った攻撃が避けられるようになり、中には得物で弾いて攻撃を仕掛けてくるものすらいる。そんな中で、クリスタルすら持たないままでは不安定であり危険であるとは、勇者自身が一番分かっているはずだ。それなのに、腕を組んで木にもたれたままの体は、動きを見せようとしない。

「ここで時間を食ってたらクリスタルを取るのが遅れるんじゃないのか」
「問題ない。…いや、今は別な問題を優先したいのだ」
「は?」

クリスタル以上に優先したい問題とは、何があるというのか。確かに長々と留まることにはならないだろうが、その時間でも無駄にはできないのではないか。言葉にしないでも、どういう意味だと疑問に思っているのは明らかだろうに、この勇者さまはなぜかこちらを一瞥しただけですぐに目を閉じてしまい、口を開こうとはしなかった。
これ以上尋ねたところで、きっと答えやしないだろう。なにより、無理矢理聞きだすのも面倒くさい。別に、先程一瞬浮かんでしまった期待が叶うことを望んでのことではない、はずだ。

「…勝手にしろ」

半ば諦めにも似た気持ちで、溜め息を吐きがてら言えば、勇者は目を開けてこちらに視線を向けてきた。それが、あの宝石を覗き込んでいた時のどこか楽しげなものに似ていて、また居心地が悪くなる。ひたすら真面目で眩しくていかにも堅物めいたこの男が、あの騒がしい二人がよく浮かべるものにも似た、そんな目をするだなんて、知らなかった。
知ることは深入りすることで、どちらかといえばこの男にはそうしたくない自分には、あまり歓迎出来ないことのはずだ。それなのに、その眼差しをひとつ知ったそれだけのことを、どこか嬉しく思っている自分がいる。そんな混乱が、居心地の悪さの理由だろうか。

「意外だな」

不意にかけられた言葉に、いつの間にか落ちていた視線を上げれば、勇者は薄青い双眸でまっすぐこちらを見つめたままだった。その頬が僅かに緩んでいるように見えて、思わず目を逸らしたくなるが、どうにか踏みとどまる。

「君のことだ。余計な世話だと、怒り出すかと思ったのだが」
「…え?」

間を開けて返した声は、我ながら少々間抜けだったように思える。やや物騒な予想をあっさりと口にした勇者といえば、そんな反応を予想していたのかいなかったのか、どちらにせよ表情を変えない。
怒り出す?なぜ?
果たして、怒り出すような要素などあっただろうか。勇者がクリスタルも手に入れていないくせに、ここに留まろうとしているせいか。しかしそれは彼自身の問題であり、その彼が問題ないと言っているのなら自分が腹を立てる必要もないだろう。ここまでの状況や会話を思い返しても、結局勇者が何故そう思い至ったのか不思議で、自分のことを勝手に予想されたことへの憤りを感じる暇もなく、むしろその疑問のせいで眉根が寄ってしまう。
勇者は相変わらず口を結んだままで開く気配もなく、こちらが理解するのを待っているように見えた。何なんだ、と内心で文句を言いながら、そもそもなぜ勇者がここに留まろうとしているのか、という疑問に辿り着いた。
あの二人がここを見付けださなければ自分がひとりになるから、と彼自身が言っていた。それは、もしかして“別な問題”と関係があるのだろうか、とそこまで考えて。
なぜ、自分がひとりではいけないのだろうか。そこに、勇者が付き合う必要はあるのか?

―――つまり、自分は彼に心配されたのか?

ようやく導かれた答に、なるほどと納得して。
つまり、自分は彼に子供扱いされて、彼はそれを怒り出すと思ったのだろう。確かに、その時にこの答が出れば腹も立っただろうが、今更にも今更すぎて逆に怒りようもない。というか、今更怒りなどしたらそれこそ子供だ。
自然と自軍のリーダーとなり、またそれだけの器量を持つこの勇者なら至極自然な理由なのだろう。個人行動の過ぎるきらいがある、と自覚するほどにはある自分なら、余計にそう思われてしまうのも仕方がないのかもしれない。それも、クリスタルを求めるその足を止めさせてしまうほどに。緊急事態でもなんでもないというのに、この勇者は意外と心配性なのだろうか。

「スコール?」

それまで無言だった勇者に訝しげに名前を呼ばれて、我に返る。ずいぶんと思考に沈んでいたらしい、そう思いながら見遣ると、勇者の視線がどこか気遣わしげなものになっていて、何かと思えば。

「顔が赤い。具合でも悪いのか?」
「顔…?」

言われたことを理解出来ないまま反射的に手を頬へ遣るが、当然グローブの冷たさを感じるのみ。とりあえず手を離してグローブを外すべきか考えていると、すぐ傍に鎧に覆われた足が見えた。また反射的に顔を上げれば、気遣わしげな視線のまま勇者がこちらに手を伸ばしてきていて。
薄い手袋に覆われた指が頬に触れた瞬間、熱を自覚した。
なんだ、なんだこれは!?
いきなり早まった鼓動に戸惑いながら呆然と見上げる先で、勇者はやや眉を寄せている。グローブほどに厚くないとはいえ、手袋越しでも熱が伝わったらしい。 それでも仕方がないと思うほどに、今自分の顔は熱い。

「熱があるのではないか?」

僅かに首を傾げて問いかけられても、傭兵である以上自己管理を徹底している自分が健康だと判断しているのだから、体調なんて悪いはずがないのだ。そう返したいのに、目は泳いで唇も震えるばかりで動こうとしない。沈黙の状態異常にでもかかったのだろうか、そんな馬鹿なことでも考えていないと、勇者の視線から全力で逃げ出してしまいそうだ。
落ちつけ、と混乱しながらも自分にひたすら言い続ける。これでは余計に勇者の手を煩わせるだけじゃないか、その予想が現実となるのは、嫌だ。それはまた子供扱いされるからなのか、まさか勇者に疎まれたくないからなのか、混乱が深まるだけだと分かるので敢えて考えないでおく。しかし、たとえ落ちついたところ で頬の手が離れるわけでもなければ、熱が引くかも分からない。どうすればいいんだ、と途方に暮れてまるで縋るような気持ちで見上げると、ふと勇者の視線が逸れた。いつも、というにはあまり経験こそないが、射抜くかのように相手と真向かう彼にしては珍しい。

「…二人を待ちがてら、ここで休むといい。彼らも無理に君を動かそうとはしないだろう」

勇者はそう言うと、ようやく手を離して持ち歩いている袋から諸々の道具を取り出した。今日のところはこれ以上進まず、ここで野宿をしていけということなのだろう。しかし彼の道具袋からということは、彼もここで休んでいくということなのだろうか。そう思い至り、慌ててキャンプの布を広げようとする腕を掴もうとして、結局出来ずに口だけ開く。

「しかし、あんたは…」
「スコール」

遮るかたちで呼ばれて、思わず言葉を引っ込めれば立ち上がった勇者が再び手を伸ばしてきた。撫でるでもなく、髪に触れるように頭に置かれた手から逃れられず、そしてまっすぐ見つめてくる薄青い双眸から、今度は目が離せなくなる。
ああそういえば、この色は、この青さは見た気がする。この勇者に再会する前にどこかで、何かで。

「君をひとりには出来ない」

それは先程も言われた言葉だ。それなのに、なぜまた頬は熱くて、心臓は跳ねるのだろうか。
そして、唐突に理解した。この目は氷の色で、あの宝石を覗いた時に過ぎったのは、この色であること。
子供扱いよりに憤るよりもその心配が、傍にいてくれるということが、触れられたことが、見つめてくれることが、嬉しいということ。
いつしか、自分が勇者に好意を持っていたということも。









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続きます


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