DFF中心の女性向け・腐注意ブログ
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結局、三人行動ということでセシルは安堵したように快諾し、勇者はほんの少しだけ残念そうな色を目に浮かべながらも承諾した。賑やかしの三人は“オレ(おれ)たちの誘いは断ったのに!”と騒いだところで、勇者に別世界の探索を命じられていた。フリオニールはテンションを落としてしまって、クラウドは特徴的な頭のつんつんを垂らせていたが、理由がスコールに分かる由もなかった。
出発の際、仲間たちから“気を付けて”の言葉をいつもの三倍くらいは盛大に聞かされた。秩序の戦士たちの中で唯一の女性であるティナや最年少だろうオニオンは、十分信頼に足る強さを秘めていることは分かっていても、つい心配しまうのだろう。そういった類のものなら自分がここまで干渉されることもないはずなのに、とスコールは半ばふてくされ気味に考える。確かに歳は若い方だが、元の世界では傭兵であって指揮官も務めていた身としては、過度な子供扱いはして欲しくないものだ。
「どうしたの?」
目的の世界へと続く森の中、前を向いて話していたはずの二人が振り返って、どこか心配そうにこちらを見ていたのに気付いて、スコールは内心自分へ舌打ちした。表に出てしまっていたのだろうか、そんな失態はこの二人には見せたくなかったのだが。
気まずそうに視線を逸らすも、足は止めないままちらちらと視線を遣ってくるオニオンとティナ。変な言い逃れやごまかしが憚られるこの雰囲気に、どこぞの眩しい奴とは違う意味で苦手なのかもしれない、と今更ながら思う。
「…考え事してただけだ」
「考え事かぁ。…スコールって、なんか難しいこと考えてそうだよね」
同年代よりはよほど頭が回るだろう少年の言葉から、年上への憧憬のようなものが感じられて、スコールは思わず口を噤んでしまう。考えていたことといえば、少しはひとりにさせて欲しいとか、あまり子供扱いしないで欲しいといった、自分でも分かるほど子供じみたことだったのだ。悟られることこそないだろうが、後ろめたいことこの上ない。
別に、と決まり文句で返してやれば、謙虚とでも受け取ったか、ひとまずはスコールの狙い通りに会話が断ち切られた。少し迷うそぶりを見せながらも進む方へと向き直ったティナが、不意にあっと声を上げる。その言葉に反応したオニオンとスコールが見る先で、森が少し開けた場所があった。
「よかった、ちゃんと着けたね」
ほっとしたようなティナの言葉を耳に入れながらスコールが眺める場所は、円を描くような木々からやわらかな陽の光が漏れる、こんな世界でさえなければピクニックに最適だろう、小さな草原だった。二人が更に進むのについて行けば、実のなる木がちらほらと見られるようになった。
「昨日はここで採ったんだよ。それで、もっと進むと…」
言うが早いか、足を止めたオニオンが指した道の先には、これまでの木々が岩へ姿を変えたのかと疑ってしまえるほど不自然に、岩の転がる荒廃した地面が続いていた。そこが目的地なのだろう。
三人は辺りを警戒しながら、草原から砂へ変わる地面へと足を踏み入れた、その時。
ずぶっ
「…っ!?」
足の裏に返ってくるのは、岩に近い固い感触のはずだった。決して、泥のような柔らかいもののはずはないのだ。慌ててスコールが自分の足元へ視線を遣ったその時には、膝元まで底なし沼のような闇に飲み込まれていた。
もしスコールが声を出すのがもう少し早ければ、咄嗟に伸ばした手は掴まれていたかもしれない。しかし仕掛けられたかのような闇は、飲み込まれたスコールですら、すぐには状況を理解出来なかったほどに静かで、前にいたオニオンとティナが気付くのも遅かった。
「っ! スコー…ル?」
「なっ…」
咄嗟に伸ばされたオニオンの手が、すかっ、と宙を掻いた。
どろりとした闇は一転、中から弾き出すようにスコールの体を吐きだし、代わりのようにその体に巻きついていたのは、先が頭になった黄色い二本の触手で。そして現れたのは、オニオンにははっきりと、ティナにはおぼろげに見覚えのある姿。外見こそ妖艶な女性でありながら、魔女とは別の魔力を秘めていることを、特にオニオンは思い知っている。
「暗闇の雲! スコールを放して!」
「何を、しにきたの…?」
触手に絡めとられているスコールを除く二人が構えるのを余所に、暗闇の雲はぐいとスコールに顔を近付けてくる。そこに値踏みするような、といった厭らしさはなければ、敵軍の者へ向けられるだろう殺気もなかった。立場に矛盾する雰囲気を悟ったティナが訝しげに見上げる先で、暗闇の雲はたおやかな指で獅子の頬をなぞる。
「ふぅむ。先程から見ておったが……もう少し観察しないと分からぬな。ふふっ」
「は…?」
下手をすれば無邪気とも言ってしまえそうな、妖艶な姿に少々似つかわしくないほど楽しげな笑みを浮かべた暗闇の雲は、絡みつかせた触手を更に動かしてみせた。しっかりと動きを封じられた上で、締め付けるような苦しさはないが、服の上を這うように蠢く触手は、とかくくすぐったい。スコールが身じろげば触手は更に絡みつくようで、解放される様子はない。
怒りとは別の感情でも頬を熱くしたスコールが、放せ、と叫ぶも聞き届けられる様子はなく、それどころか暗闇の雲自身まで密着してくる始末。
「ちょっと、観察の粋を超えてない!?」
「ど、どうしよう、魔法出したらスコールに当たっちゃいそうだし…」
全裸にも近い美女が絡んでいる場景というのは、彼女が敵方であるという認識が薄れてさえしまえば、幼い少年には些か刺激が強いものなのかもしれない。自分と同程度にかは顔を赤くしているオニオンを見て、スコールは少年と少女に見られている事実に苦々しさを覚える。
しかし、ティナの言うように魔法が当たってしまいそうなほど、密着されているという状況は変わらない。元々の性格からか、あるいは相手が実際には性別不明の妖魔だと分かっているおかげで、美女相手でもさほど動揺せずに済んでいる自分の気性に感謝しながら、スコールは興味深そうに顔やらファーやらを触ってくる暗闇の雲を睨みつけた。
「あんた、観察と言っていたが…本当の目的はなんだ」
というかこれはもう観察じゃなくて触診だ、とは心の中だけで呟いて。暗闇の雲に殺気がないことはとうに分かっているが、かといってこれが罠でも何でもないとは到底思えない。
「いやな。あの魔女がいつもお前を可愛い可愛いというものだから、確かめに来たのだ」
「……アルティミシア?」
魔女というと真っ先に浮かぶのは、時を操る露出狂寸前の格好をした彼女である。スコールにとっては宿敵であり、いつかは決着を着けねばならない相手であるが、殺気は向けられても愛情を向けられる筋合いはないはずだ。対峙している時の彼女は、暗闇の雲が言うような素振りを見せただろうか。
―――よく分からない。
対峙の記憶を掘り返しながらスコールが小首を傾げた時、不意に暗闇の雲が声を上げた。
「おお! それだ、それ」
「は?」
「いつも仏頂面をしているが、今の顔はずいぶん幼く見えたぞ」
「スコールは時々子供みたいな顔するからね」
「ほう、そうなのか」
なぜか嬉しそうに言う暗闇の雲に、なぜか胸を張って答えるオニオン。未だ危害を加える様子もなく、本当に興味津々でスコールの観察をしている妖魔に、少年と少女は僅かながら警戒を解いているらしい。二人とも武器こそ手に持っているが、構えはしていなかった。捕まったままのスコールも辺りの気配を探りはしていたが、少なくともこの世界には自分を含めた三人と妖魔しかおらず、イミテーションが現れる兆しもない。
それはともかく。仏頂面だの幼く見えただの、ずいぶん勝手なことを言ってくれるじゃないか。オニオンに子供みたいな顔と称されたことと、自分の歳を明かした時の仲間の驚き様を思い出したのもあり、スコールの眉間に皺が寄っていく。
「ふむ、意外と表情豊かではないか。面白いな」
「そうなの、顔を見てると何考えてるかって意外と分かるのよ」
(ティナまで……というか、俺、そんなに顔に出やすいのか…?)
なぜか同調するティナに思わず項垂れれば、露わになった項に触手の一方が頭を擦りつけてくる。それに肩を跳ねさせてばっと面を上げるも、そこにはこちらを観察してくる暗闇の雲の顔しかない。
「……分かってきたやもしれん」
「な、何が…!」
「お主、可愛いな」
「あん?」
スコールが呆気にとられるのにもお構いなしに、ひとりうんうんと頷く妖魔。見てみてば、触手までが動きに合わせて頷いている。うっかりするとその動きこそが『可愛く』思えてしまいそうで、相変わらず殺気もなければ隠された罠などがある様子もなく、この妖魔は果たして本当に敵対している相手なのか、そこから疑ってしまいかねない。
(いや、絆されてる場合じゃないだろ……)
内心自分にツッコミを入れて、いい加減解放されたいと身じろぐも、やはり触手は外れる気配もなく服の上を好き勝手に這ってくる。くすぐったさに漏れてしまいそうな声を必死で飲み込めば、また“可愛い”と口にして笑う暗闇の雲。その笑顔に厭らしさの欠片でもあれば怒りに任せることもできそうなものだが、生憎と無邪気なそれのままで、スコールを戸惑わせて止まない。
どうすればいいんだ、と焦燥に駆られそうな頭をなんとか抑え込んで考えていると、不意にオニオンとティナの表情が視界に入った。途端に、びくりとスコールの肩が跳ねる。
と、いうのも、二人が揃いも揃って胡乱げな目で暗闇の雲を睨み上げていたからだ。恐れすら抱きながら、スコールが二人を見守っている先で、オニオンが低い低い声で呟いた。
「僕…モヤモヤするんだけど」
「私も……暗闇の雲、あなた…」
「ずるい!!」
一瞬の静寂。
「……へ?」
「いつまで“それ”やるつもりなんだよ! いい加減僕たちにスコールを返して!」
「可愛いって確かめたのなら、もういいじゃない! あなたばっかりずるいわ!」
まて、お前たちは一体、何を言っているんだ。口元をひくつかせたスコールがそう問おうにも、叫ぶや否や更にキツくなった二人の眼差しを目にしてしまっては、とても口に出せそうにない。先程まで胸を張ったり妖魔に同調したりしていたとは思えない、突然敵愾心を露わにした二人に、スコールの頭は妖魔の行為や言動とは別の戸惑いに支配される。
一言で言うならば、いつもの二人じゃない。更に言えば、何がずるいのか、スコールには一向に理解出来そうにない。
「くくく、こやつらも例外なく、大層な好かれようじゃな。しばし待て、ほどいてやろう」
「え? あ?」
こちらはこちらで今まで散々拘束してくれていたくせに、ひと笑いしたところで解放すると言う。状況についていけず、混乱しているのを余所に触手はするすると離れていき、宙に浮いていたスコールの体は重力に従って、ぼとりと地面へ落ちた。
「…っ」
「スコール! 大丈夫!?」
オニオンとティナはすぐさま駆け寄ってきて――元々すぐそばにいたために距離という距離はなかったのだが、それほど慌てた様子だった――心配そのものの表情で顔を覗き込んでくる。とりあえずスコールが安心してしまったほどには、二人の表情はいつも通りの少年と少女のものに戻っていた。
「せっかくだ、魔女に報告でもしに行くか。では、また」
「!? 報告って、何…を……」
耳に入ってきた不穏な独り言に、はっとして顔を上げるも、返ってきたのは暗闇の雲が闇に沈んだ音のみ。尻もちをついたまま取り残されてしまったスコールは、しがみ付いてきたオニオンを反射的に受け止めてから、深い深い溜め息を吐いた。魔女へ何を報告するつもりなのかも気になるが、“また”ということは、何かあれば再び観察に来るつもりなのだろう。
もしも次にあの妖魔に会うことがあるならば、純粋に敵対するだけの立場で以て、戦場で再会したいものだ。少なくとも、あんな無邪気な顔で弄くりに来るだけは止めて欲しい。普通ならあまり歓迎できない考えも、翻弄されて疲弊したスコールの頭には、希望の形で自然と浮かんでしまうのだった。
「アルティミシア、わしは“確認”したぞ」
「ほう? それで、どうでしたか」
「獅子は可愛いな」
「そうでしょう、そうでしょう! ふふふっ」
「奴は仲間にずいぶん気に入られているな。あの小僧と小娘も例外ではなかったとは」
「ええ、その通……え?」
「あと、項と脇腹が弱いようじゃな。くすぐったいようで、真っ赤になりおった」
「…なんですって? 暗闇の雲、貴方…スコールに何をしたのです…?」
「ん? 触手で拘束しただけよ。観察はより近くで、しかし安全にせねばならぬからな」
「触手で拘束ですって……? 私もまだしたことないのに!! そこに直れ、ああ恨めしい!!」
「いや、お前は一体何を怒っているのだ…待て待て、落ちつけ」
「落ちついていられるか! 私も見たい!!」
「だったらしてこればいいだろうに…それで見ればいいじゃろ」
「……そう、そうでしたね。では暗闇の雲、協力してくれますね?」
「まぁ、暇だしの。わしも気になるしな」
さて、これが更なる獅子の受難に続くとは、己が興味のみで動く暗闇の雲に思い付く由もなかったのだ。
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非常に遅くなってすみませんでした! そして雲さんを動かしたかったりスコールを愛されまくったりさせてみたらグダグダになってしまった感が…申し訳ないです。
リクエストありがとうございました!
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